2022 Fiscal Year Annual Research Report
Hierarchical Heterogeneity and Plastic Mechanics of Thermosetting Composites
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22H01795
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
春藤 淳臣 九州大学, 工学研究院, 准教授 (40585915)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ガラス / デフォーカスイメージング / 界面濃縮 / シリカ / 応力集中 / 破壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱硬化性樹脂はフィラーと複合化した状態でしばしば使用される。しかしながら、フィラー界面近傍では一方の成分が濃縮し、化学量論から逸脱した状態で硬化反応が進行するため、フィラーの効果が十分に発揮されているとは言い難い。本研究では、ナノ物性マッピング解析に基づき、熱硬化性コンポジットのフィラー界面の存在が不均一性、ひいては応力分布、靭性や破壊挙動に与える影響を明らかにすることを目的とした。令和4年度に実施した具体的な項目と主な研究成果を以下にまとめる。
(1) 本年度は、装置を新たにセットアップし、直径7 nmの量子ドットの熱運動の追跡に成功した。標準サンプルとして、ポリアクリルアミドゲル中に量子ドットを分散させ、ある一定のひずみでゲルを伸長した状態で量子ドットの熱運動を追跡したところ、異方的な熱運動が確認された。異方性の程度は、測定場所に依存して異なることも明らかになった。 (2) フィラー界面近傍には、一方の成分が濃縮することが知られている。そこで、界面近傍のモデル試料として、エポキシとアミンの化学量論比を変えたエポキシ硬化物を作製した。ガラス転移温度と質量密度は、アミン分率の増加に伴い減少した。引張試験を実施したところ、破断ひずみ、ひいては靭性は、アミン分率の増加に伴い増加し、最大値に達した後、減少した。現在、全原子動力学分子シミュレーションに基づき、ネットワーク構造とその不均一性を検討中である。 (3) シリカをフィラーとして用い、シリカ分率を変えたエポキシ硬化物を作製した。ガラス転移温度は、シリカ分率にほぼ依存しなかった。一方、ヤング率および降伏応力は、シリカ分率の増加に伴い、増加した。しかしながら、ヤング率の値は、エポキシマトリクスとシリカの2成分を仮定した予測値に比べて小さいことから、シリカ界面近傍には脆弱層が存在することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実施項目として、初年度に (1) 測定装置のセットアップとその検証、(2) 試料の変形過程における不均一性の解析、また、次年度以降に、(3) 変形過程における応力分布の可視化、(4) 靭性と破壊挙動の解析、(5) 不均一性、応力分布と靭性・破壊挙動の相関解析を設定した。
当初の計画に従って、令和4 年度は実施項目(1) ならびに (2) を実施し、ナノサイズの量子ドットの熱運動解析を可能とする装置を新たにセットアップし、ならびに伸長した試料内部の不均一性に関する知見を得た。また、一部の実施項目を前倒しで実施し、エポキシとアミンの化学量論比、およびシリカの添加がエポキシ硬化物の熱・力学物性に及ぼす影響を検討し、シリカ界面近傍における不均一性に関する知見を得た。
研究成果は学術論文や国内外の学会にて発表済みであり、さらに学術論文2報として投稿・査読中である。以上の理由により、おおむね順調に研究が進展したと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度セットアップした装置を用いて、引き続き空間不均一性の解析を実施する。とくに、実試料であるシリカ含有コンポジットを対象に、伸長に伴う不均一性の程度とその特徴長さの変化について検討を行う。また、蛍光発光や光弾性法、プローブ粒子の座標解析等を用いて、変形状態における応力分布の可視化を検討する予定である。
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Research Products
(17 results)