2022 Fiscal Year Annual Research Report
Hydrogen absorption mechanism of aluminum-transition metal alloys from air
Project/Area Number |
22H01821
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
齋藤 寛之 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 放射光科学研究センター, グループリーダー (20373243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 春也 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 上席研究員 (70354941)
田口 富嗣 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員 (50354832)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水素吸蔵 / マグネトロンスパッタ / アルミニウム合金 / 放射光 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは2020年にマグネトロンスパッタ法で作製したアルミニウム-鉄(Al-Fe)合金薄膜が、成膜後に大気中に取り出すだけで約1重量%の水素を吸蔵すること、さらには、吸蔵された水素が常圧下での加熱により水素ガスとして取り出せることを発見した。Al-Fe合金は従来の水素科学の知見からは水素吸蔵しない材料に分類される。本発見は水素吸蔵しないと考えられていた合金の薄膜が、大気から水素を取り込み吸蔵し放出することを示したものである。Al-遷移金属(TM)薄膜の水素吸蔵は、薄膜が特異な微細組織を有するアモルファル構造をとる場合にのみ実現する。本課題ではAl-FeをはじめとするAl-TM薄膜の水素吸蔵メカニズムの解明をめざす。具体的には、①大気から水素を取り込むメカニズム②薄膜中の水素の安定化機構③アモルファス構造と水素吸蔵能の関係を調べる。水素科学の定石を覆す成果となり、新規創エネルギーデバイスの実現、水素貯蔵の低コスト化につながると期待する。 令和4年度には本研究に必要な超高真空チャンバーの立ち上げを主に実施した。目的とするAl-Fe合金薄膜が超高真空中で成膜可能であることを確認した。また、常圧水素吸蔵のポイントとなる微細構造を有していることもSEMおよびTEM観察により明らかにした。一方で、新たに導入した超高真空チャンバーで成膜した試料は、水素吸蔵量が少ないことも分かった。成膜条件がわずかに異なることによって微細構造が変化して、水素吸蔵量に影響を及ぼしている可能性が高いことが分かった。現在、成膜条件を最適化して水素吸蔵量の増加を図るとともに、どの様な微細構造の違いが水素吸蔵量に影響を及ぼしているのかを明らかにすることで、本研究課題の目的である常圧水素吸蔵メカニズムの解明につなげることを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたとおり、アルミニウム合金薄膜作製用の超高真空チャンバーの立ち上げを完了し、本装置を用いた合金薄膜の作製とSEMやTEMによる評価を実施している。常圧水素吸蔵が確認されているアルミニウム合金薄膜とほぼ同じ微細構造を有する薄膜の成膜に成功している一方で、水素吸蔵量が少ないという違いも確認されている。成膜条件を最適化することで、従来装置と同様の水素量を有する膜の作製を目指しているが、この研究により、微細構造と水素吸蔵量の関係がさらに詳しく調べられる様になる可能性が高く、アルミニウム合金薄膜による常圧水素吸蔵のメカニズムの解明が当初計画以上に進む可能性もある。以上から、本研究課題は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、(1)大気からの水素吸蔵メカニズムの解明、(2)水素と結合する金属の化学状態の調査、(3)アモルファス構造と水素吸蔵能の関係を調べる。研究推進方法も計画通りとし(1)については大気非接触での各種ガスとの反応の確認、(2)についてはTEM-EELSやXAFS測定、(3)についてはTEMによる微細組織観察と放射光二体分布関数測定を実施する。とくに初年度の研究で、成膜条件によっては水素吸蔵量が低下することが確認されたので、水素吸蔵量とそれぞれの測定結果の関係についても検討を進める。 研究代表者の所属するグループでは令和5年度に新たにFE-SEMと軟X線分光器を導入することを予定している。本装置を用いて、アルミニウム薄膜の微細構造、ならびに、金属の化学状態の測定を実施し、さらに研究を加速させる予定である。 加えて、研究代表者の所属するグループでは薄膜試料を測定可能なX線回折測定装置の導入も計画している。アモルファス試料のX線回折測定が実験室でも可能となるため、本装置も積極的に活用し、アモルファス構造と水素吸蔵能の関係を明らかにする計画を加速させる。
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Research Products
(17 results)