2023 Fiscal Year Annual Research Report
多相合金の組織最適化によるFe基耐熱合金の耐高温酸化性向上手法の提案
Project/Area Number |
22H01823
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
林 重成 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10321960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 鈴枝 北海道大学, 工学研究院, 助教 (30806005)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高温酸化 / 耐熱合金の組織 / 析出相のサイズ / 多相合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、耐熱合金中の析出物の組織が材料の高温耐酸化性におよぼす影響を明らかにすることにある。今年度は、昨年度から引き続きアルミナ皮膜の形成に及ぼす高Al金属間化合物相のサイズの影響を調査するとともに、Ti添加によるアルミナ形成合金の耐酸化性の低下(アルミナ形成能あるいは維持能の低下)を、合金中にTi化合物を形成させることによる無害化を検討した。 Ni-Cr-Al系のγ+γ'二相合金を用いた検討からは、実験開始時の昇温速度の違いにより酸化初期の高温酸化挙動に明確な違いがあることが明らかになった。昇温速度が速い場合、微細なγプライム相を有する合金の酸化量は増加した。これは22年度の結果とは逆の結果であったが、昇温速度が遅い場合には、微細なγプライム相を有する合金の酸化量が低下した。酸化挙動に及ぼす合金組織の影響が、昇温速度によって全く逆の結果となった理由は、微細なγプライム相を有する合金上には、昇温速度が速い場合、酸化初期に準安定相であるθアルミナが、一方、昇温速度が遅い場合、安定層であるαアルミナが形成するためであることが明らかとなった。このような初期酸化挙動の違いは、アルミナの相変態に影響をおよぼす添加元素のCrの影響がγプライム相のサイズによって異なったためであると説明された。 Fe基合金上のアルミナ皮膜形成におよぼすTiの悪影響に関する検討では、炭素添加によりTiCを形成させてTiを固定化することによりTiの無害化を検討したが、TiCによる固定化は耐酸化性に殆ど影響を与えないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で用いる合金中の析出相の粗大化にとても時間がかかるため、試料作成に時間がかかっているが、γ+γ'構造を持つ合金の耐酸化性に及ぼすγ'相のサイズの影響についてはかなり理解が進んでいる。現状、そのメカニズムの検証のための拡散実験を大至急実施する必要があるが、本研究で目標としている組織の影響については定性的には確信が得られてきた。Crは酸化初期にクロミア皮膜を形成し、それが準安定アルミナ相の形成を抑制して、安定アルミナ皮膜の形成を促すことが知られているが、今年度の検討からは、アルミナ皮膜の形成に直接関連しないCrの効果もまた析出相のサイズに強く影響を受けていることが明らかになった。これは今まで考えていなかった全く新規な結果であり、本研究での優れた成果であると判断出来る。また、有害元素であるTiの無害化についても検討を進められていることから、研究の進捗は概ね良好であると判断出来る。 なお、昨年度と同様に拡散実験による各合金元素の拡散フラックスの定量評価が遅れており、そちらは今後迅速に進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討を今年度も継続し、より信頼性の高いデータを取得するとともに、そのメカニズムの定量的な説明を行うための拡散実験を進める。この点については、実験を担当する学生を1名増員して検討を進める。また、異なる高Al化合物を使用した場合の、化合物の違いによる組織と耐酸化性の関係を検討する。 また、耐酸化性を向上させ、機械的特性との両立を図るためには、機械的特性には有用であるが耐酸化性には有害な合金元素の耐酸化性に対する無害化を行う必要が有る。Tiは機械的特性には極めて有益であるにもかかわらず、耐酸化性に対しては有害となる元素の代表例であり、耐酸化性に対する無害化を進める必要がある。炭化物形成に関する検討をさらに進めるとともに、その他の元素による固定化が無害化に繋がるかどうかを検討する。
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