2023 Fiscal Year Annual Research Report
Study of atmospheric corrosion of steel by hydrogen mapping and surface water analysis
Project/Area Number |
22H01826
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮本 浩一郎 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70447142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伏見 公志 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (20271645)
吉信 達夫 東北大学, 医工学研究科, 教授 (30243265)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 大気腐食 / 水素侵入 / 化学イメージセンサ / 大気下光電子収量法 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の生活を支える鉄鋼製品は、大気暴露によって表面水薄膜が成長し、飛散物が付着することで大気腐食の危険にさらされる。大気腐食により鋼材中に水素が侵入すると、水素脆化により材料強度が急速に低下する。本研究は、鋼材に侵入する水素の振る舞い、および鋼材表面の水薄膜のダイナミクスを明らかにすることが目的である。 本年度の成果は以下の通りである。(1)独自に構築した大気下光電子収量測定系によって、鋼材表面に水膜が形成された湿潤状態から、乾燥によって水膜が消失し、塩の析出や腐食進行に至る過程をその場観察することに成功した。薄膜状の水膜、さらに水膜の消失に至る過程を大気下光電子収量法によって測定した初めての成果である。水膜は蒸発や腐食によって成分が大きく変動していると予想されるが、測定データが水膜の性質をどの程度反映しているか解析を進める予定である。(2)電気化学的に鋼材への水素チャージを行い、直ちに大気下光電子収量法による観察を実施する実験系を構築した。(3)鋼材への水素チャージによる仕事関数の変化を示した。さらに段階的な水素チャージによる仕事関数の変化や、チャージ完了後には経時的な仕事関数の回復を観測することにも成功した。大気下光電子収量法によって鋼中の水素が検出可能であることを示唆する初めての成果を得た。この手法は、従来行われてきたケルビンプローブ法による解析より簡便であり、さらに空間分解測定を可能とするポテンシャルも有する。次年度には本手法による測定をさらに進展させる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したとおり大気腐食と鉄鋼材料への水素侵入を解析するための測定系の整備と原理実証が完了し、材料表面における水膜の形成と消失を評価する系、あるいは水素侵入による鋼材の物性変化を解明する計測技術を構築した。大気下光電子収量法によるこのような測定系は初めての成果であり、期待された進捗である。一方で、多元的な水膜の評価という意味では、実施できなかった試験法があり、来年度に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究期間に、鋼材への水素侵入の起点となる腐食面を大気下光電子収量法によってその場観察することに成功し、水素侵入後の物性を反映した健常な面(裏面)においては水素侵入による仕事関数の変化を検出した。大気下光電子収量法の測定原理からすれば測定領域を光で定義していることになるが、この利点を活用した研究は前例がない。そこで鋼材表面の仕事関数をマッピングすることに取り組む。鋼材表面の水膜測定系を構築した際に、ミラーやマスクを導入した光学系を検討しており、これに集光系を追加することで局所の測定を実現する。加えて、走査光学系(あるいは試料ステージの駆動系)を導入し、2次元マッピングを実現する。このような仕事関数のマッピングによって、鋼材のどこに水素が侵入しやすいか、どのように鋼材中を拡散していくかをその場観察することが可能になると期待される。
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