2022 Fiscal Year Annual Research Report
異種界面エネルギー整合に基づく全固体Liイオン電池向け高安定高密度負極の設計
Project/Area Number |
22H01828
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
神原 淳 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (80359661)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 全固体電池 / 表面自由エネルギー / シリコン |
Outline of Annual Research Achievements |
<粉体表面自由エネルギーSFE計測系の構築とナノ粒子のSFE計測>ナノサイズの粒状体の表面自由エネルギーを計測するWashburn測定システムを組み上げた。従来方式のナノ粒状体を対象とした時の課題を洗い出し,計測の再現性を高めることに成功した。平板Siと同様に,ナノ粒子においても酸化抑制に伴いSFE極性成分が低下する傾向が得られた。しかしSFE分散成分は小さく,曲率半径の減少により総SFEも低下する傾向が認められた。 <プラズマスプレー法によるナノ粒子SFEの変調制御性と徐酸化反応の定量化> プラズマスプレー法によるナノ粒子生成環境と条件を調整し,同一粒度分布を有するナノ粒子を生成しながら,表面酸化度を低減させうることを実証した。新たに見出された興味深い点は,比較的酸化度の高い粒子表面はSiの酸化膜のSi-O結合種割合を記述するRBMモデルに従う傾向に対して,低酸素分圧低温下で徐酸化処理を施した粒子は,3価以上のSi-O結合が抑制された表面構造に調製され,当該粒子はハンドリングに十分な時間,大気雰囲気下でも安定存在できることを見出した。 ナノ粒子生成直後の徐酸化時に複数の冷却条件並びに酸素分圧条件を設定し,その場計測した温度履歴と当該粒子の酸化度の計測結果を利用して, 4価の酸化を仮定した徐酸化の総括反応を定量評価した。バルク体に対してナノ粒子化に伴い活性化エネルギーが低下し酸化進行しやすくなるが,800K以下では反応速度定数が顕著に低下することから本温度以下への急冷により酸化を効果的に抑制しうる可能性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
従来のナノ粒子生成では生成後の酸化過程に十分な定量的評価に基づく処理は行われていなかった。従って,粒子径が小さくなに従って大きくなる比表面積に比例して体積比酸化量が増加することで,重量比電池容量における酸素の影響が大きくなる結果,不可逆容量が増加して電池容量の低下を誘発していた。今回,プラズマスプレーによるナノ粒子生成直後の酸化過程に焦点を当てて,冷却条件と酸素分圧条件を系統的に設定し徐酸化反応速度定数も定量評価する事で,サイズと酸化度を独立に制御したナノ粒子の生成が可能となった。この結果,電池サイクル特性へのサイズと酸化度の影響を切り分けて議論できるようになり,高容量と高サイクル維持性を両立させるためのナノ粒子サイズ並びに酸化膜構造に対する構造指針の方向性を得る事も可能となった。 電池の複合電極形成においては,多様な材料の均質混合が安定な電極形成には重要となる。一般にナノ粒子を利用すると粒子凝集が顕著となり有機系溶媒との濡れ性も低下して,ダマ形成に繋がる事から,これら凝集・濡れ性の直接的な指標としての表面自由エネルギーSFE値が必要となるが,特に極性・分散成分に切り分けたSFE値の報告は殆ど無かった。今回,あるサイズのナノ粒子に対して表面酸化を調整させる事ができるようになったことから,酸化に伴うSFE成分を初めて計測する事に成功し,代表的有機溶媒,有機バインダーとのSFE値の観点からの相違点を確認することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
電池特性とナノ粒子の酸化度およびSi-O結合との相関より,初期放電容量の増加には酸化度は抑えつつSi-O結合は4配位がLi合金化を介してのサイクル安定化には有利に働く可能性が示唆された。従って,本理想構造実現に向けて,酸化抑制を促進するためにプラズマスプレーによるナノ粒子形成直後に800K以下までにいち早く冷却出来るようにプロセス並びに装置改良を進めると同時に,低酸素分圧の真空下においてサブオキサイドの不均化反応を導入してSi-O4結合に変換促進させる手法を検討する。これにより更なる高容量化と高サイクル性の両立を目指す。 また,ナノ粒子SFE値の計算予測では,粒径の減少に伴うSFE値の変化が古典熱力学や分子動力学により大きく異なり,引き続き議論が交わされている。表面構造を精緻に調整した粒子を準備し,超遠心分離を利用して詳細にサイズを切り分けた状態でSFE成分値を測定することで,実験的にナノ粒子の構造とSFE値との相関に対する知見を提示しTolemen表面領域の定義の再考に一石を投じたい。さらに本SFE計測法を各種電池構成材にも適用し,電池化に伴う電極安定性との結果を総合的に評価する事で,最小界面エネルギー或いは最大密着強度指標を検証し,SFEに基づく全固体電池の安定構造化指針の提示を進める。
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