2022 Fiscal Year Annual Research Report
高誘電率ヘテロ配位子によるグライム系錯体の制御高度化と室温アルミニウム電析の進化
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22H01830
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北田 敦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30636254)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アルミニウム電析 / グライム / 室温電析 / イオン液体 / 配位環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は金属イオンの配位環境と電析挙動の相関を見出すことにある。ここでは過去10年にわたり研究してきたグライム系室温アルミニウム(Al)電析をケーススタディとしつつ、他の系への展開も検討している。 (i)グライム類は低誘電率であるがキレート能を有するため配位能力が比較的高い。よってヘテロ配位子を導入して錯体の対称性を低下させることで脱溶媒和を誘発し、電析速度を向上させることを狙いとして、誘電率の高いカーボネート系溶媒(プロピレンカーボネートなど)を添加した系を検討した。しかし少量の添加でも系が電気化学的に不活性となり、予想とは逆の結果が得られたため、配位環境を含めた調査を継続中である。 (ii)Alイオンまわりの配位環境と電析挙動の関係を調査するために、4級ホスホニウムカチオン(トリヘキシルテトラデシルホスホニウム; P6,6,6,14+)とクロロアルミネートアニオン(主としてAl2Cl7-)からなるルイス酸性イオン液体について検討した。一分子についてのDFT計算により、Al2Cl7-のCl-イオン(Al3+の第一配位圏)がP6,6,6,14+のアルキル鎖水素(Al3+の第二配位圏)と、単独Cl-やAlCl4-にはない特異的に水素結合を有することで長鎖アルキル基が屈曲した構造をとることが示唆された。この分子構造が関与すると思われる特異的な粘性の熱履歴や希釈効果を見出した。粘性の熱履歴は、アルキル鎖が比較的短い通常のイオン液体の場合には見られないものである。用いたP6,6,6,14+の長鎖アルキル基と同じ長さを持つn-テトラデカンをヘテロ溶媒として添加した系においても粘性と電気化学特性のデカップリングを同様に観測した。加えて、室温・無攪拌の条件においてAlナノ粒子の集積による電析皮膜の超平滑化を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電析挙動というマクロ特性を配位環境というミクロ特性から理解するという意味で、本研究は着実に進展している。 まず、ホスホニウムクロロアルミネートイオン液体において実験的に見出された特異的な巨視物性を一分子レベルの量子化学計算により明らかにされた分子構造と関連づけて説明することに成功した。次にこの裏付けとして、用いたカチオンの長鎖アルキル基と同じ長さを持つn-tetradecaneをヘテロ溶媒として添加した系においても粘性と電気化学特性のデカップリングを同様に観測した。 これらのことはヘテロ溶媒添加効果を分子レベルでの計算によって検証することの有効性を示すものであり、当初予期していなかったグライム系へのカーボネート溶媒添加による不活性化現象を解明し現実系にフィードバックする上でも役立つものと思われ、今後の推進方策につながるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
グライム・カーボネート系などのヘテロ溶媒添加系の配位環境や溶媒和エネルギー、拡散係数を計算化学によって調査し、電解液特性を予測することで実験にフィードバックする。配位環境と電析挙動の相関を包括的に探索するという意味で他の系への展開を視野に入れており、粘度の熱履歴という他のイオン液体には見られない特異物性が見出されたホスホニウム系イオン液体や、近年イオンペア形成と負極特性の相関が取り沙汰されているリチウム系をターゲットとした研究も推進する予定である。
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Research Products
(5 results)