2022 Fiscal Year Annual Research Report
プロセス-構造-物性相関に基づく高熱伝導コンポジット材料プロセス設計指針の確立
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22H01844
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
塚田 隆夫 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 特任教授 (10171969)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | コンポジット材料 / 高熱伝導率 / マルチスケールシミュレーション / プロセス設計 / 構造評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) ナノ粒子/高分子系の界面親和性および接触熱抵抗の評価法の開発:デカン酸修飾Al2O3/高分子系を対象に全原子MDシミュレーションを実行した。ここで,高分子はポリプロピレン(PP),ポリスチレン(PS),ポリメタクリル酸メチル(PMMA)とし,親和性の指標としてデカン酸修飾Al2O3平面/高分子間の付着仕事および濡れ係数を評価した。デカン酸修飾Al2O3/PP間の付着仕事は修飾率25%で最大となった。また,PP,PS,PMMAの濡れ係数は溶解度パラメータから予想される傾向と一致した。さらに,デカン酸修飾Al2O3/PP系を対象に非平衡MDシミュレーションによる界面接触熱抵抗を評価し,表面修飾により界面接触熱抵抗が低減されることを確認した。 2) 高分子コンポジット内のナノ粒子の高次構造評価法の開発:離散要素法に基づく数値シミュレーションにより,高分子液体(PP,PS)中でのデカン酸修飾Al2O3ナノ粒子の凝集・分散挙動の数値シミュレーションを行い,高分子と修飾鎖の親和性の違いによりPP中では分散,PS中では凝集挙動を示すことを明かにした。 3) 高分子コンポジット材料の熱伝導率の定量評価:1)および2)で得られた接触熱抵抗とナノ粒子の空間構造を考慮した有限体積法によるコンポジット材料内の伝熱解析およびコンポジット材料の有効熱伝導率を求める解析手法を開発し,既往の研究およびマクスウェルの式による有効熱伝導率の値との比較により解析手法の妥当性を確認した。また,PPおよびPS中のナノ粒子の分散・凝集構造に依存して有効熱伝導率が異なることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
接触熱抵抗およびナノ粒子構造を考慮した高分子コンポジット材料の有効熱伝導率の定量評価手法の開発にまで至り,シミュレーションに関しては当初の予定以上に進展したと判断する。一方,高分子コンポジット薄膜の作製および熱伝導率測定法の開発に関しては,材料および薄膜作製の準備を行うだけにとどまり,進展しなかった。以上を鑑み,(2)と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1) ナノ粒子/高分子系の界面親和性および接触熱抵抗の定量評価:引き続き種々の有機修飾分子,高分子,修飾有機分子の表面修飾率等を変更したシミュレーションを実施し,有機分子修飾無機固体/高分子界面の親和性および接触熱抵抗を評価する。 2) 高分子コンポジット内のナノ粒子の高次構造評価:本年度のシミュレーションにせん断流の影響を考慮し,高分子液体中の表面修飾ナノ粒子の構造形成シミュレーションを実施する。 3) 高分子コンポジット材料の熱伝導率の定量評価:引き続き本年度開発した手法を用いて,1)および2)の結果を考慮したコンポジット材料の有効熱伝導率を求め,親和性/プロセス-構造-熱伝導率の相関を検討する。 4) 高分子コンポジット薄膜の熱伝導率測定:スピンコート法もしくはブレードコート法によりコンポジット薄膜を作製し,3ω法をはじめ,いくつかの測定法によりコンポジット薄膜の熱伝導率測定を試み,シミュレーション結果との比較検討を行う。
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