2023 Fiscal Year Annual Research Report
オペランド複素インピーダンス解析によるポリアミド系逆浸透膜の塩素劣化機構解明
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22H01847
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田中 厚志 信州大学, 先鋭領域融合研究群先鋭材料研究所, 特任教授 (30417878)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐伯 大輔 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (70633832)
巽 広輔 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (60336609)
手嶋 勝弥 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (00402131)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | reverse osmosis membrane / polyamide membrane / impedance spectroscopy / chlorine exposure / membrane degradation |
Outline of Annual Research Achievements |
市販の芳香族ポリアミド系の逆浸透膜(以下RO膜)をNaClO水溶液又は/及び水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、その処理前後で透水速度、イオン流束を求め、膜の電気化学インピーダンスペクトル(以下EIS)を測定した。 RO膜は、日東電工社製の海水淡水化用のSWC5を用いた。KCl 10mmol/Lの電解液を0.3~0.7 MPaの範囲で供給し、透水速度、イオン透過流束、脱塩率などを求めた。また、前年の知見を踏まえ、①Pristne膜、②NaClO(200ppm)浸漬、③NaOH(0.1mol/L)浸漬、④NaClO(200ppm) + NaOH (0.1mmol/L)浸漬、⑤NaClO(200ppm) + NaOH (0.1mol/L)浸漬の5種類のサンプルを準備した。浸漬時間はいずれも24時間である。内径約20mmの透水セルを用いて浸透圧相当の圧力を1次側に加え、クロスフロー状態でインピーダンを測定した。EIS測定用の電極は、低周波領域まで測定が可能になるように白金電極に白金黒めっき処理をしたものを用いた。これにより、RO膜の活性層のスペクトルを支持層部分と分離し、解析可能とした。測定スペクトルをMaxwell-Wagnerモデルに基づく等価回路で解析し、活性層部分の膜抵抗(Rm)を求めた。 ①のPristine膜のRmは約285Ωを示した。⑤のサンプルでは、活性層スペクトルはほぼ消失した。透水速度はPristine膜に比較して約1.33倍、またイオンの透過流速は約2倍にとなった。脱塩率はPristine膜が99.61%(@0.7MPa)に対して、⑤では99.01%(@0.7MPa)であった。EIS測定では活性層のスペクトルが消失しても、イオンの阻止能力は残存しているといえる。②、③、④の膜でもそれぞれRmの減少が観測され、EISにより劣化が定量的に把握できることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次亜塩素酸処理と水酸化ナトリウム処理の組み合わせにより劣化状態の進行をおよそ把握することができた。特に次亜塩素酸のみの処理で活性層の疎水性が進行し、透水速度が減少することが明らかになった。これに関連し、EISの測定において、2次側からの電解液の注入時に、疎水性の進行が把握できることが判明した。このことは今後の実験条件を詰めていくうえで重要な知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度、2年度目の知見を基に、NaClO水溶液のみ、およびNaClO水溶液+NaOH水溶液のシーケンシャル浸漬条件をもとに、RO膜の劣化のプロセスを解明していく。特に、NaClO処理においては、pHに依存して劣化機構に違いが発生するとの文献情報があるので、浸漬時のpHを制御し、活性層スペクトルの変化への影響などを詳細に調査する。併せてXPS、FTIRによる測定、解析を実施し、アミド結合の切断などとの対応関係を調べていく予定である。
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