2022 Fiscal Year Annual Research Report
Design and rapid production of pharmaceutical cocrystal using lipid liquified in supercritical CO2
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22H01857
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
下山 裕介 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (30403984)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 共結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
医薬成分としてtheophyllineを,共有体としてnicotinamideを用い,脂肪酸であるoleic acid, linoleic acid中での共結晶形成について検証した.脂肪酸に含まれているカルボキシル基によるtheophylline,nicotinamideとの相互作用について検証するため,脂肪酸と同じ炭素鎖を有する炭化水素1-octadeceneを媒体とした共結晶の形成も行った.粉末X線回折により得られたピーク強度を用いて,Reference Intensity Raio (RIR)法に基づき,共結晶形成度を算出し,媒体種の影響について検証した.媒体として脂肪酸であるoleic acid,ならびにlinoleic acidを用いた場合,炭化水素である1-octadeceneを媒体とした場合と比較して,TPL / NA共結晶の形成度が大幅に増大していた.これは,脂肪酸に含まれるカルボン酸基が,theophyllineおよびnicotinamideと相互作用を形成し,各々の結晶表面が緩和され,共結晶の形成が促進されると考えられる. 常温常圧で固体であるstearic acidを,超臨界CO2と接触させ融液を形成することで,Itrazonazole共結晶の形成場として利用することを試みた.5.0 MPaの高圧CO2中のstearic acidでは,Itraconazole / succinic acid共結晶の形成が確認されなかった.一方で,10.0 MPaの超臨界CO2中で融解したstearic acidでは,共結晶の形成が確認された.以上より,stearic acidを超臨界CO2と接触させて形成された融液は,Itraconazole共結晶の形成に効果的であることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
超臨界CO2による脂肪酸の融液を利用した共結晶の形成において,まず媒体となる脂肪酸が共結晶形成の促進に効果があることを確認できたため,医薬成分種,共結晶を形成する共有体分子に対する脂肪酸の選定に関する知見を蓄積することができた.特に,粉末X線回折法のピーク強度によりRIR法から算出した共結晶形成度より,脂肪酸に含まれるカルボン酸基が,医薬成分種,共結晶を形成する共有体分子と相互作用を形成し,各々の結晶表面が緩和され,共結晶の形成が促進されるといった知見が得られたことは,超臨界CO2による脂肪酸融液を用いた共結晶形成プロセスの設計において重要な知見となった.医薬成分としてItraconazoleを選択した場合,常温常圧下における脂肪酸媒体,ならびに5.0 MPaの高圧CO2と接触した脂肪酸媒体においては,共結晶の形成は確認されなかった一方で,10.0 MPaの超臨界CO2と接触させたstearic acidにおいて共結晶形成が確認された.このように,一般的に共結晶の形成が困難である医薬成分に対して,超臨界CO2による脂肪酸融液を媒体とした共結晶形成プロセスの優位性が明確に示された点は高く評価できる.以上より,今年度の研究成果では,脂質媒体の共結晶形成における促進効果に加え,超臨界CO2による脂質媒体の融液が,共結晶の形成が困難である医薬成分に対して有効であると,いった成果が得られており,当初の計画以上に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,超臨界CO2による脂質融液が共結晶形成に有効であることが示されており,今後は共結晶形成プロセスの実用化を念頭にした以下の研究推進が必要となる.(1) 超臨界CO2による脂質融液プロセスの設計:超臨界CO2は温度,圧力変化に伴い,密度が連続的かつ大幅に変化する特徴を有する.そのため,共結晶形成において温度,圧力を変化させた系統的なデータの蓄積により,対象となる医薬成分の共結晶形成に最適な操作条件の最適化が必要となる.また,超臨界CO2を用いた共結晶形成プロセスでは,高圧操作が必要となるため,加圧および減圧による操作の複雑化,共結晶の量産化が課題となる.そこで,少量の高圧容器を配列させたカートリッジ式のプロセスを構築し,共結晶形成の迅速化を図ることも重要となる.(2) 超臨界CO2による脂質融液中での共結晶形成機構の解明:昨年度に購入したラマン分光法を可視窓付き高圧容器に連結させ,共結晶の形成過程をオンサイトで観察可能なシステムを形成する.共結晶形成におけるラマン分光スペクトルより,医薬成分分子,共有体分子と,脂質成分との相互作用を把握し,共結晶形成機構の解明を図る必要もある.(3) 本研究課題で提案する,超臨界CO2による脂質融液中での共結晶形成プロセスでは,対象となる医薬成分,共有体成分に対して、最適な脂質成分を選択,さらには超臨界CO2による融解挙動を把握する必要がある.そのため,申請者がこれまでに取り組んできた分子情報を統計熱力学に融合した理論モデルと,機械学習を駆使することで,共結晶形成に適した脂質成分の選択,さらには超臨界CO2による融解挙動を予測する計算モデルの構築にも取り組む必要がある.
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