2022 Fiscal Year Annual Research Report
色素増感型ナノシート光触媒による高効率可視光水分解
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22H01862
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
前田 和彦 東京工業大学, 理学院, 教授 (40549234)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 人工光合成 / 水素製造 |
Outline of Annual Research Achievements |
膨大な太陽光エネルギーと地球上に豊富な水から水素を作り出すことができれば、再生可能なクリーンエネルギー製造の観点から社会に大きなインパクトを与えると期待できる。そのような太陽光水素製造技術のひとつとして、強い可視光吸収能を有する金属錯体と安定な金属酸化物半導体粉末を組み合わせたハイブリッド型光触媒による、水からの水素生成反応が注目されている。 我々はすでに、Pt担持HCa2Nb3O10ナノシートに対して増感色素として[Ru(dmb)2(4,4'-(PO3H2)2bpy)]2+(Ruと表記)を吸着担持したものを水素生成光触媒として用いると、酸素生成用のWO3系光触媒と組み合わせたZスキーム水分解反応において可視光水分解が進行することを見出していた。さらに、Ruの吸着前にPt担持HCa2Nb3O10ナノシートに対してAl2O3修飾を施すと、可視光水分解の効率が飛躍的に高まることを報告していた。 2022年度の最大の成果は、このRu/Pt/HCa2Nb3O10に対してアニオン性ポリマーであるポリスチレンスルホン酸(PSS)を担持すると、可視光水分解の効率がさらに高まり、比較的弱い強度の疑似太陽光照射下でも0.12%の太陽光水素エネルギー変換効率を達成したことである。この値は、未修飾体よりも約100倍高い。ペンシルベニア大学のMallouk教授との国際共同研究として行った過渡吸収分光測定により、PSSは水素生成光触媒上で起こる逆電子移動反応を効率的に抑制していることが明らかとなり、結果として正反応である水素生成が促進されることがわかった。この成果はScience Advances誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
色素増感型酸化物ナノシート光触媒の表面修飾により、太陽光水素エネルギー変換効率を約100倍に向上させることに成功した。これは予想外の成果であることから、当初の計画以上に進展したと判断した
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は2022年度の知見をさらに拡張、深化させる目的で、PSS以外のアニオン性ポリマーの修飾効果や光触媒反応条件が活性に与える影響を系統的に明らかにすることを目的とする。 2023年度の前期は主にアニオン性ポリマーを中心に、修飾材を広く検討して最適な光触媒活性を与えるものを絞り込む。同時に、光触媒試料の構造特性を分光化学的手法や電子顕微鏡を用いて解析し、光触媒活性との関連性を明らかとする。後期には、絞り込みを行った光触媒材料に対して、水素生成半反応あるいは水分解反応の反応条件が活性に与える影響を調べ、より高いエネルギー変換効率を実現する光触媒系の構築に努める。
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