2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of vaccine adjuvant based on peptidic supramolecules loaded with antigenic proteins
Project/Area Number |
22H01884
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
若林 里衣 九州大学, 工学研究院, 准教授 (60595148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南畑 孝介 九州大学, 工学研究院, 助教 (90648586) [Withdrawn]
神谷 典穂 九州大学, 工学研究院, 教授 (50302766)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ワクチン / アジュバント / 超分子 / ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
ワクチンは、感染症の予防だけでなく、がんやアレルギーなどの難治性疾患の新たな治療法として注目を集める医薬品である。本研究では、ワクチン製剤に添加される免疫増強剤、アジュバントとして、水中で自己組織化しファイバー状構造体を形成するペプチド超分子の利用を提案している。特に、抗原タンパク質を直接超分子ファイバーに結合した一体型ワクチンにより、抗原提示細胞に抗原を高効率に送達できるデリバリーシステムの開発を目指した。 2022年度は初年度であるため、ワクチン創製の基盤として、ペプチド超分子、抗原タンパク質の設計、および抗原タンパク質を超分子上に結合するための酵素反応の評価を重点的に行った。酵素としてトランスグルタミナーゼを用い、C末端にトランスグルタミナーゼ認識部位を持つ両親媒性ペプチド(PA)を複数種類合成し、分子構造と超分子構造、酵素反応性の相関を評価した。結果、C末端への架電性アミノ酸の導入が超分子形成や酵素反応性へ大きく影響すること、二種類以上のPAを混合した共集合戦略により、様々な表面電荷を持つPA超分子ファイバーの形成とファイバー上への抗原タンパク質の担持が可能であることが明らかとなった。また、ファイバー上に担持することで、抗原タンパク質の抗原提示細胞内への導入効率が有意に高まることを確認した。一方、抗原タンパク質の種類によっては、超分子と抗原タンパク質間の部位特異的な架橋反応が十分に進行しないものも確認され、PAおよび抗原タンパク質、用いる酵素の再検討の必要性が生じたため、後半に予定していた動物実験を延期し、当該実験に係る予算を次年度繰越とした。 以上の前半の結果に関し、14件の学会発表(内招待・依頼講演5件、国際会議での発表7件)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究実施計画では、2022年度前半にPA超分子、抗原タンパク質の設計と解析、酵素反応性、抗原提示細胞への抗原送達能の評価を行い、後半にマウスに投与した際の免疫反応の評価を行う予定であった。前半の項目に関しては、架電性アミノ酸を導入した各種PAの自己組織化挙動、酵素反応性を評価し、共集合化という戦略で、物性の異なる複数種類の超分子ファイバー上への抗原タンパク質の担持に成功した。さらに超分子ファイバーへの担持により抗原タンパク質の抗原提示細胞への送達能が向上することを見出すことができ、順調に進めることができた。 一方、抗原タンパク質の種類を変更した際に酵素反応性、反応部位に課題が見つかったため、PA設計および抗原タンパク質の配列、酵素の再検討の必要性が生じ、後半に予定していた動物実験を延期した。当該年度中に詳細な評価には至らなかったが、トランスグルタミナーゼの代替となる、より特異性の高い架橋酵素の利用により、酵素反応性の課題を解決できることを示唆する結果を得た。翌年度以降にPA設計の最適化と自己組織化評価、酵素反応性、抗原提示細胞への送達能の詳細な評価を行い、十分な効果が得られれば、動物実験を進める予定である。 以上の状況から、現在までの進捗状況をやや遅れていると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、上記記載の酵素を用いて超分子ファイバーへの抗原タンパク質の担持を評価する。ペプチド配列および疎水性置換基の異なる複数種類のPAを設計・合成し、ファイバー形成および酵素反応性、反応部位を詳細に調べる。抗原タンパク質として、まず緑色蛍光タンパク質をモデルとして用い、その後、実抗原タンパク質にも展開し、タンパク質のサイズや構造、電荷、サブユニット数などによる反応性やファイバー担持後の構造への影響を評価する。ファイバー形成は各種分光学的手法、顕微鏡観察により、酵素反応性および反応部位は高速液体クロマトグラフィーにより評価する。 超分子ファイバーへの十分な担持が確認された場合、抗原提示細胞への送達能および送達経路をフローサイトメトリや蛍光顕微鏡観察により評価する。細胞への導入効率が高い超分子が得られた場合、実際にマウスに投与した際の免疫反応を評価する。 以上に関して、研究代表者の若林が計画・実施・総括を行う。研究分担者の神谷教授は抗原タンパク質の調製を行う。研究協力者の大学院生はPAのスクリーニング、細胞(動物)実験を実施する。
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Research Products
(14 results)