2023 Fiscal Year Annual Research Report
歪みによる原子層モアレ構造の制御とモアレ光機能デバイスの創製
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22H01899
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
蒲 江 東京工業大学, 理学院, 准教授 (00805765)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 遷移金属ダイカルコゲナイド / ヘテロ構造 / モアレパターン / 歪み効果 / 発光デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、原子層ヘテロ構造に生じるモアレパターンを歪みにより連続制御する技術を構築することで、新しい発光・受光機能を有するデバイスの実現を目指す。具体的には、柔軟な基板上に遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)による回転積層ヘテロ構造を作製し、機械的変形を行うことで任意のモアレ構造制御を行う。これにより、モアレポテンシャルに閉じ込められた励起子の次元性を連続的に変調可能となり、モアレ励起子の量子状態及び偏光自由度を機能化した発光・受光デバイスの作製を目的とする。 この目的に対し本年度は、(1)歪み効果とモアレパターン変調の相関解明、(2)歪み効果による電子構造変調の評価、(3)歪みを導入した発光デバイス作製を行った。以下、項目ごとに示す。 (1)歪み効果とモアレパターン変調の相関解明 : TMDCヘテロ構造に任意の歪みを印加した時のモアレパターン変調を、ピエゾAFM観測、顕微分光測定(ラマン、第二次高調波)、及びシミュレーションにより評価した。その結果、印加する歪み方位・強度とモアレ構造変化の相関を解明し、長方形のモアレパターンや一次元的なモアレパターンなど、既存手法では達成困難な超格子構造の作製に成功した。 (2)歪み効果による電子構造変調の評価 : 理論計算により、歪みによりモアレパターンが変化した時の、モアレバンドの変調を評価した。その結果、歪みによるモアレバンド変化として、vHS特異点やフラットバンドの発現を示唆する結果が得られた。また、角度分解光電子分光を用いて、歪み効果とバンド構造変化を直接評価する準備も行った。 (3)歪みを導入した発光デバイス作製 : 上述の歪み印加したヘテロ・モアレ構造に対し、電解質を用いた発光デバイスの作製を行った。その結果、歪み効果を受けた電流励起発光特性の観測に成功し、今後、モアレ構造制御を活かした量子発光機能・デバイスの創製が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究提案の基礎となる歪みによるモアレパターン変調の相関関係を解明し、任意のモアレ構造制御技術を構築した。また、モアレ変調によるバンド構造変化の評価も行い、構造制御がもたらす物性・機能発現の解明を行った。さらに、歪みによるバンド構造変化の直接観測技術や、発光デバイスの作製・評価技術の確立も行った。したがって、本年度の成果は今後のデバイス機能の評価の根幹をなすものであり、研究提案の達成に対し順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで構築した歪みによるモアレ制御技術、バンド構造評価、及び歪みデバイス作製技術をを基に、様々な歪み効果を導入した遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)ヘテロ・モアレ試料において、モアレポテンシャル変化とデバイスの発光・受光特性を解明する。特に、歪み制御したモアレ試料において発光デバイスを作製し、偏光分解発光分光測定を導入し、モアレ励起子の光学・偏光特性及びその歪み依存性を調べる。例えば、1次元モアレポテンシャルにおいては、モアレ周期の方位に依存した偏光発光が期待でき、歪みにより任意の直線偏光を発光・受光するデバイス機能が創出可能となる。また、TMDCは特異な電子構造(バレー分極)を有しており、励起子形成のスピン選択則に起因した円二色性を有することが知られている。二次元のモアレポテンシャルに閉じ込められたモアレ励起子は、バレー分極に起因した円偏光発光が生じ、ポテンシャル深さ等によりその二色比の制御も理論予測されている。したがって、歪み制御によりモアレポテンシャルの深さ・周期を変調すれば、モアレ励起子の円偏光発光及びその円二色比を制御可能であると考えられる。さらに、歪み強度・方位も最適化すれば、究極的に0次元の量子ドット状のモアレポテンシャルが実現でき、スピン選択性を有する単一光子発光も期待できる。以上より、偏光分解及び超高感度分光測定系を独自に構築することで、モアレパターン変調による発光特性の解明を行う。また、モアレパターン制御と光学特性の相関については、理論計算による検証も行う予定である。さらに、モアレパターン変調に起因した電子構造変化は角度分解光電子分光により可視化も試みる。以上の、顕微・分光評価と理論検証を組み合わせ、特殊なモアレパターンに起因した光物性に関して実験・理論両面から系統的な理解を行う。
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Research Products
(14 results)