2022 Fiscal Year Annual Research Report
The mechanism of electromigration studied by real-time ultrasound monitoring for single nanowire
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22H01908
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長久保 白 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (70751113)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | エレクトロマイグレーション / リアルタイムモニタリング / ピコ秒超音波法 / 欠陥 / 拡散 / ナノ力学特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は単線Al系合金に高密度電流を流し、破断までの寿命時間の予測、自動計測プログラムの作成、超高周波超音波を用いた非破壊その場リアルタイム診断を実現した。まず実験条件を精査するために室温環境下で電流印加試験を行い、特定の厚さ・幅・長さのAl合金ナノワイヤに対して27-29 MA/cm2の電流印加を行い、破断寿命を見積もった。そのうえでピコ秒超音波法により作成したプログラムを用いて電流印加による反射率変化を非接触・非破壊で計測した。電流印加によりレーザ計測個所において破断した試料では電気抵抗はほぼ変化が現れない時点から超音波の第1エコーの振幅や熱拡散速度が低下することを発見した。この減衰は特に100GHz帯の高周波領域において顕著であった。欠陥は超音波の散乱源になる。そして超音波の散乱減衰係数は散乱体の大きさの3乗と周波数の4乗に比例して大きくなる。よって欠陥が多い方が減衰が大きくなり、さらに高周波成分ほど減衰が大きい。その結果、高周波成分が低周波成分よりも減衰する割合が高くなり、計測した反射率変化の第1エコーの周波数が下がる 一方、計測個所以外で破断した試料においてはそれらの変化はほとんど現れず、また電流を印可しないコントロール実験も同様に変化に乏しい結果を示した。この変化は電気抵抗が変化するだいぶ以前の時点から欠陥の生成と拡散が始まっていることを超音波計測によって非破壊・その場・リアルタイム観測を示したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度では計測プログラムと計測光学系を見直すことにより、より厳密に電流の印加・停止と超音波計測を繰り返し行うことを実現した。これは試料毎に本質的に破断寿命が異なるエレクトロマイグレーションの実験において重要な実験手法の確立であり、このプログラムを用いることによって実験の再現性の確認やばらつきの評価、コントロール実験との比較まで達成することができた。また破断モニタリング試験においても破断する寿命時間の半分以上前の時点から超音波エコーおよび熱拡散を表す光反射率変化が大きく変化することをとらえることに成功した。破断に至る応答も粒界・薄膜内における欠陥の増加を示す結果のみならず、基板との剥離を示すようなデータまで得ることができ、非常に示唆に富んだ重要な結果を多数得ることができた。以上より現在までの進捗状況は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当面は現在のAl合金単線に対するモニタリング実験を継続する。超音波エコーを用いた欠陥の生成過程のモニタリングを行いつつ、超音波エコーで欠陥の形成を検出した段階で中断し、透過型電子顕微鏡による断面観察を行う。これにより実際の内部構造と音響応答の関係を調査し、フェムト秒パルスレーザによって励起した超高周波超音波による欠陥生成手法を確立する。そのうえで細線の材料を変更したり、単結晶試料を用いることで粒界の影響を取り除いた試料を使用したりすることにより、エレクトロマイグレーションによる拡散過程を非破壊的に解明する。
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