2023 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ結晶粒内のピコスケール歪み分布計測による格子変調エンジニアリングの開拓
Project/Area Number |
22H01918
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
加藤 健一 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 専任研究員 (90344390)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 全散乱 / PDF / エネルギー分散型検出器 / コンプトン散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
格子エンジニアリングの基盤となるナノ結晶粒内の格子歪み分布をピコスケールで可視化するために、全散乱スペクトロスコピー法を開発している。本年度は、ボトルネックとなっている時間効率を上げるために、最終的にエネルギー分散型検出器が15台搭載できるステージを製作した。そのステージを利用して、前方散乱に昨年度導入したSiドリフト検出器(SDD)、後方散乱に既存のCdTe検出器を設置して実験を行った。CdTe検出器はSDDより量子効率が3-4倍高いため、散乱角に対して急激に減衰するトムソン散乱を捉えやすくなった。一方、CdTe検出器のエネルギー分解能はSDDに対して半分程度に劣るが、コンプトン散乱とトムソン散乱のエネルギー差は散乱角に依存して増加するため、得られたエネルギースペクトルをコンプトンシフトを考慮してフィッティングすることで分離可能であることがわかった。また、CdTe検出器はSDDと比較して電気ノイズや振動に脆弱なことが判明し、取付けユニットを樹脂製にしたり、防振材を挿入したりして対策を施した。さらに角度分解能を犠牲にすることなく測定効率を向上させるため、検出器用のスリットサイズを結晶性や散乱角に応じて最適なものを選択できるようにした。以上のような効率化とノイズ対策を行った計測システムについて、コンプトン散乱の影響が大きい炭素系化合物で評価測定を行った。その結果、現実的な測定時間で後方散乱においてS/N比が最大30倍程度向上し、従来の計測手法では100万カウント以上計数しても観測できなかったブラッグ反射や散漫散乱を捉えることに成功した。以上の開発状況を3年に一度行われる国際結晶学会議で発表したところ、大きな反響を呼んだ。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初想定していなかった検出器のノイズの問題に直面したが、着実に解決しながら進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
水素吸蔵ナノ結晶に全散乱スペクトロスコピー法と格子変調関数法を適用して、結晶粒内部の格子歪み分布をピコスケールで明らかにする。
|