2023 Fiscal Year Annual Research Report
単結晶の巨大圧電性と多結晶の強靭性を併せ持つ革新的圧電トランスデューサ薄膜の創出
Project/Area Number |
22H01925
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉田 慎哉 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (30509691)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | コンポジット / 単結晶 / エピタキシャル成長 / PZT / PMN-PT / 圧電MEMS |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)圧電単結晶-多結晶コンポジット薄膜のボトムアップ形成法の開発 圧電単結晶薄膜に靭性を付与することを目的に、単結晶薄膜の面内に多結晶パターンを形成する術を開発している。これまでは、Pt多結晶パターンをエピタキシャルバッファ層に形成し、それをチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)多結晶体の成長起点とする方式を用いてきた。その結果、コンセプトの実証は達成された。しかし、Ptは高コストであり、本プロセスの歩留まりは高くないという課題があった。そこで当該年度は、エピタキシャルバッファ層を部分的にウェットエッチングすることで、その領域上でのPZTの多結晶成長を促すことを試みた。実験の結果、エッチング条件を最適化することで、純ペロブスカイト相のPZT多結晶体を形成することに成功した。そして、この手法を用いて、PZTの単結晶・多結晶コンポジット膜の試作にも成功した。
(2)巨大圧電単結晶薄膜の成膜方法の開発 引き続き、巨大圧電性を有するSm添加マグネシウムニオブ酸・チタン酸鉛(Sm-PMN-PT)の成膜法を開発している。昨年度、この材料の課題はパイロクロア相が極めて発生しやすい点にあることがわかった。そこで、下地エピタキシャルバッファ層の品質管理や、スパッタターゲットの鉛量の最適化を行った。その結果、純ペロブスカイト相のSm-PMN-PT単結晶薄膜の成膜に成功した。次に、PMNとPTとの比を調整し、薄膜状態におけるモルフォトロピック相境界組成を調査した。そして、その組成の単結晶薄膜の圧電定数|e31,f|は、24C/m^2に達することを実証した。これは、アクチュエータ用PZT薄膜の値を大きく上回る。ゆえに、Sm-PMN-PT単結晶薄膜は、圧電MEMSアクチュエータの性能向上をもたらす可能性があることが示された。また、非鉛系圧電材料である窒化アルミ系材料の高性能化についての検討も開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開発した成膜装置は安定稼働しており、圧電薄膜の成膜技術の研究開発は順調に進んでいる。圧電単結晶・多結晶コンポジット薄膜の形成には既に成功し、巨大圧電性を有する膜も得られつつある。ゆえに、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、圧電単結晶-多結晶コンポジット薄膜のボトムアップ形成法、および巨大圧電単結晶薄膜の成膜方法の開発を進めていく。そして、両者の技術を統合し、本研究の目標達成を目指す。
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