2022 Fiscal Year Annual Research Report
Integrated solid-state nanopores for single-cell multiomics analysis
Project/Area Number |
22H01926
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
筒井 真楠 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50546596)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ナノポア / イオン電流 / 1分子検出 / マルチオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
サラウンドゲート電極をナノポアに集積したFET型ナノポアを用いて、DNAとタンパク質の1分子泳動制御を実施した。実験では、まず両面が厚さ50 nmの窒化シリコン膜で被覆されたシリコンウエハの片面に、フォトリソグラフィーと金属スパッタにより、引き出し電極を形成した。続いて、ウェットエッチング処理によりシリコン層を除去し、窒化シリコンメンブレンを形成した。その後、電子線リソグラフィにより直径150 nm~100 nmの円を描画した、現像後のレジスト層をマスクとして用いることで、反応性イオンエッチングによりナノポアを開口させた。そして、電子線描画法により今度はゲート電極パターンをナノポア周囲に描画し、白金層をスパッタしたのち、有機溶媒中でリフトオフした。最後に、メンブレン上面から化学蒸着法により厚さ20 nmの二酸化ケイ素層を蒸着した。こうして作製したFET型ナノポアを用いて、様々な長さのDNAや牛血清アルブミン等のタンパク質分子の1分子検出を実施した。ゲート電圧に加える電圧により、ナノポア内に生じる電気浸透流の流速が変化し、これにより当該分子の泳動速度を精密に制御することが可能であることを確認した。さらに、電解質溶液の誘電率によるDNAの1分子イオン電流信号増強法を創成することにも成功した。この新規手法は、ナノポアに注入する生理食塩水にエタノールやグリセロールを混合するだけでの、非常に簡便かつ効果的な手法であり、誘電率だけでなく粘性も変えれば、分子の泳動速度の低減も図ることができるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、FET型ナノポアを用いたDNAとタンパク質の1分子泳動制御法の創成に成功した。また、ナノポアの上下で電解質溶液の誘電率が異なる状況を作ることで、DNAの1分子イオン電流信号が大幅に増強できることを新たに発見した。これにより、イオン電流計測によるDNAやタンパク質の1分子識別精度の飛躍的な向上が見込まれ、次年度以降に実施する集積ナノポアを用いたマルチオミクス計測でより多くの種類の分子が識別可能になる見通しを立てることができた。これは想定上の成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進捗しており、大きな障害となるような新たな課題も出てきていない。このため、今後の研究も当初の計画通り進める予定である。
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