2023 Fiscal Year Annual Research Report
空間反転対称の破れた物質群の開発による新奇キラル物性の開拓
Project/Area Number |
22H01937
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
須田 理行 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80585159)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 非相反超伝導 / スピントロニクス / キラリティ / CISS効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、(超)伝導特性、磁気特性などの機能物性を有する低次元無機ナノ構造体にキラル分子を化学的に組み込んだ人工超格子構造の創製という新たなアプローチにより、空間反転対称性の破れた機能物質群をボトムアップ的にデザインする新たな化学的設計指針を提示するとともに、スピン流生成、カイラル超伝導、キラル磁性といったキラル物性の創出を目指す。同時に、スピントロニクス・スピン電気化学反応などへの応用を指向した、これらの物質の材料化・デバイス化への展開を行い、空間反転対称性の破れに基づく新たな物質科学基盤を開拓する。 本年度は、2次元層状物質である遷移金属ダイカルコゲナイドへのキラル分子インターカレーションによるキラル金属およびキラル超伝導体の創製に取り組んだ。キラル分子をインターカレーションした金属TiS2では、挿入したキラリティの選択によりアップスピン、ダウンスピンそれぞれに対して95%のスピン偏極率を示すことを確認し、ほぼ完全なスピン選択性を実現した。これは、金属伝導性とCISS効果によるほぼ完全なスピン選択性を同時に実現した初めての例であり、マグネットレススピントロニクスという新たな可能性を切り開くものである。また、MoTe2にキラル分子をインターカレーションした系では、低温で超伝導転移を確認するとともに、磁場下で非相反超伝導特性を観測した。この非相反性は挿入分子のキラリティに応じて反転することから、挿入分子のキラリティに応じた非相反性を始めて実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度までに確立した遷移金属ダイカルコゲナイドへのキラル分子インターカレーション法を用いてキラル金属、キラル超伝導体を創製し、ほぼ完全なスピン選択性、分子キラリティ由来の非相反超伝導という新奇なキラル物性を観測することに成功しており、当初の計画通り、順調に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、前年度までに確立した遷移金属ダイカルコゲナイドへのキラル分子インターカレーション法を用いてキラル金属、キラル超伝導体を創製し、ほぼ完全なスピン選択性、分子キラリティ由来の非相反超伝導という新奇なキラル物性を観測することに成功した。この確立した層状物質へのキラル分子インターカレーション技術を、更に磁性体やトポロジカル物質にも適用し、非自明なキラル物性の開拓を目指す。
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