2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22H01939
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下澤 雅明 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (40736162)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井澤 公一 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (90302637)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 走査型SQUID顕微鏡 / 走査型TMR素子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまでに独自に開発した走査型SQUID・TMR素子顕微鏡の低温セルを改良・改造して、電流/熱流下でも精密に局所磁気測定が可能なシステムの構築に取り組んだ。 具体的には、低温セルの骨格にマコール素材を用いた円筒構造を導入することで、(1)環境振動の影響を受けにくくなると共に、(2)動作部分(ピエゾ素子)との熱膨張の親和性が良くなり、低温でも安定して試料表面を観察できるように改良した。このセルの大部分は、マコールを利用しているので、(3)金属特有の「電流遮蔽効果」や「外部への熱損失」が抑制され、電流/熱流を印加できるような設計にもなっている。 これらの改良点は、従来の磁気顕微鏡で浮き彫りになった問題点を反映したものである。 (1について)従来は走査範囲を拡大するため、セルには板状の支柱を利用したが、この構造だと振動に弱く、試料との距離に敏感なSQUID顕微鏡の画像が乱れる問題があった。新しい低温セルでは、板状構造と比較して2次元平面からの揺らぎに対して安定な円筒構造を採用した。 (2について)支柱を板状から円筒状に変更することで、走査範囲の減少という致命的な問題が発生してしまう。特に低温では、熱膨張によって試料台とSQUID台の相対位置が変化しまい、狙った位置で局所磁気測定ができない問題が頻発していた。そのため、低温セル全体で熱膨張率の温度依存性が揃うように配慮する必要があることが分かった。 (3について)金沢工大との共同研究で、周囲が金属で覆われている状況のもとで、交流電流が作り出す磁場を超高感度のSQUIDで精密測定したところ、印加した電流の周波数によって磁気信号が変化しており、金属特有の遮蔽効果が観測された。一般的に、数10 Hz以下の低周波領域では問題にならなかった遮蔽効果も、高精度の走査型SQUID顕微鏡で測定する場合には、考慮しないといけないことが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記(研究実績の概要)で報告した通り、電流/熱流下でも精密に局所磁気測定が可能な走査型SQUID・TMR素子顕微鏡システムの構築に取り組んだ。本年度は、低温セルの改良に取り組み、後1ヶ月ほどで正常運転に移ることができると考えている。新しい低温セルを作製する必要が生じてしまったことは予定外であったが、それ以降の研究進捗状況は比較的順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、作製した測定システムを用いて、熱流が作り出すスピン蓄積の観測に挑戦する。さらに可能であれば、軌道流や磁気トロイダルドメインの直接観察にも取り組む。
|
-
-
-
-
[Presentation] 新規トロイダル金属HoAgGeの非線形横伝導率測定2022
Author(s)
宮本大輝, 高尾祥平, 多田勝哉, 小路山竜平, 細井優, 下澤雅明, 井澤公一, 八城美愛, 速水賢, 大貫惇睦, 青木大
Organizer
日本物理学会 秋季大会
-
-