2023 Fiscal Year Annual Research Report
Theory of spin current phenomena utilizing the superconducting vortex as a real-space topological defect
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22H01941
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
安立 裕人 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (10397903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 雄介 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20261547)
大江 純一郎 東邦大学, 理学部, 教授 (40510251)
市岡 優典 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 教授 (90304295)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スピン流 / スピンホール効果 / 超伝導渦糸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、超伝導の量子渦糸が磁束の量子化条件で保護された実空間のトポロジカル欠陥であり、スピンを内包するカプセルとして機能する点に着目する。この超伝導量子渦糸に閉じ込めたスピンが渦糸と連動して動くのか否かを理論的に解明し、超伝導渦糸を利用した新しいスピン輸送原理を確立することを目的としている。 我々の先行研究 [T. Taira et al., Phys. Rev. B 103, 134417 (2021)] では、久保公式から超伝導渦糸スピンホール伝導度を計算することによって、超伝導渦糸液体領域(超伝導転移近くでの揺らぎに伴う有限抵抗領域)で逆スピンホール電圧の温度依存性にピーク構造が現れることを示した。その上で、超伝導渦糸スピンホール効果が対応する実験結果 [M. Umeda et al., Appl. Phys. Lett. 112, 232601 (2018)] を説明できると主張した。この久保公式によるアプローチでは、逆スピンホール電圧の温度・磁場依存性を系統的に計算できるというメリットがある一方で、理論計算結果が「渦糸とともに動くスピン流」という物理的描像と対応しているのか否か、具体的に把握しにくいという難点があった。一方、このような(フェルミオン自由度に対する)久保公式と相補的なアプローチとして時間依存ギンツブルグ・ランダウ理論が知られており、超伝導渦糸ネルンスト効果の記述などで威力を発揮している。 そこで、令和5年度は、まずはスピン流が存在する状況での時間依存ギンツブルグ・ランダウ方程式を微視的に導出した。更に、電流存在下のいわゆる渦糸フロー状態のSchmid-Caroli-Maki解を参考にして、スピン流が存在する際の時間依存ギンツブルグ・ランダウ方程式の解を構成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は、本研究課題の目標の1つであるスピン流の存在下での時間依存ギンツブルグ・ランダウ方程式の微視的導出に成功した。更に、スピン流の存在下での時間依存ギンツブルグ・ランダウ方程式の定常解も構成することができた。これらの成果は、Adachi et al., arXiv:2402.12758 (2024) にまとめられている。以上の成果を勘案すると、当初掲げた目標はおおむねクリアできたと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度をもってスピン流の存在下での時間依存ギンツブルグ・ランダウ方程式の微視的導出を完了したため、今後は、導出した時間依存ギンツブルグ・ランダウ方程式の数値シミュレーションに取り組む必要がある。上部臨界磁場近くでの時間依存ギンツブルグ・ランダウ方程式の数値シミュレーション法として、クーパー対波動関数を少数の低次ランダウ準位に射影して計算する方法が知られている。本研究でも、この方向のアプローチを試みる予定である。
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