2023 Fiscal Year Annual Research Report
Multiple phase transitions and optoelectronic properties of new metastable titanate
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22H01947
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉松 公平 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (30711030)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 酸化チタン / 準安定相 / 構造相転移 / X線回折 |
Outline of Annual Research Achievements |
準安定なλ相Ti3O5の温度誘起相転移現象を結晶構造変化の観点から解明するため、高エネルギー加速器研究機構の放射光施設でX線回折測定を行った。温度依存の電気抵抗測定から得られた抵抗率のキンク構造が見られた350 Kが構造相転移の開始温度に対応することを600回折ピークの半値幅から明らかにした。単結晶薄膜試料の測定により特定の結晶軸方向の構造変化を観測することが可能となり、λ相Ti3O5のc軸方向にのみ350 K以上で600回折ピークの広がりが起こることを見出した。このピークの広がりは準安定相のλ相Ti3O5と高温安定相のα相Ti3O5の結晶構造の違いを反映しており、c軸方向にTiとO原子がわずかにずれることで構造相転移が発現することを意味している。350 Kから単斜晶構造を持つλ相Ti3O5の構造相転移が徐々に進行し、単斜晶角が90度へと減少する様子が601と60-1回折ピーク位置の温度変化から観測された。単斜晶角の温度依存性は温度の1/2乗に従う典型的な二次相転移の傾向に従っており、相転移温度が460 Kであることが明らかとなった。この温度も温度依存の電気抵抗測定の結果と合致しており、λ相Ti3O5において構造と電子物性が密接に関係していることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年間の研究でλ相Ti3O5が示す温度相転移現象に関して、電気特性と構造変化の両面で成果が得られ両者が密接に関連する結果が得られた。得られた知見を元に最終年度ではより詳細な電子および構造物性変化を観測する計画を立案できており、さらなる相転移現象の解明が期待できるため。
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Strategy for Future Research Activity |
λ相Ti3O5の相転移に伴う電子物性変化を電子分光測定から明らかにする。脱出深さの大きく表面酸化の影響が少ない硬X線光電子分光測定を用い、相転移前後でのフェルミ準位近傍の電子状態変化を明らかとする。抵抗率の温度依存性では金属絶縁体転移が350 Kである結果が得られており、その前後でTi 3d状態密度が大きく変化することが期待される。また、Ti 2p内殻スペクトルや硬X線の利点を生かしたTi 1s内殻スペクトルの温度変化測定も行うことで、相転移に伴うTiの電子状態変化を包括的に議論する。 硬X線光電子分光実験を進めるため、λ相Ti3O5薄膜の表面を膜厚~10 nmほどの薄い非晶質Al2O3でキャップした多層膜試料を新たに合成する。基板もキャップ層も絶縁体であるために光電子分光測定でチャージングの危険性がある。そこで試料表面からAl金属を薄膜内部へ打ち込むワイヤーボンディングによりアースとの導通をとり、硬X線光電子分光測定を可能とする。 本研究課題の最終年度となるため、電子分光に加えてこれまでに得られた構造解析・電気特性・光誘起相転移の結果を総括し、λ相Ti3O5の多彩な相転移現象の発現メカニズムや相転移に伴う光・電子物性変化の詳細をまとめ、多彩な相転移を活用した光・電子デバイス応用の可能性について議論していく。
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Research Products
(4 results)