2022 Fiscal Year Annual Research Report
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22H01956
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
治田 充貴 京都大学, 化学研究所, 准教授 (00711574)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | STEM / EELS / 電子軌道 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子エネルギー損失分光法(EELS)の内殻電子励起スペクトルの微細構造(ELNES)と、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を組み合わせたSTEM-EELS法により、電子軌道可視化の可能性に関する実験的実証研究を行った。本年度はルチル型TiO2を持いたTi L2,3-edgeとO K-edgeのELNESマッピングを実験的に得るために、これまで開発してきた手法を用いることで実験的研究を行った。酸素 K-edgeスペクトルのマップではスペクトルの全エネルギー範囲を積算したマップでは各酸素原子が球状コントラストとして観察された一方で、ELNES内の各ピークを用いたマップでは終状態のp軌道の異方性を反映したような異方的な楕円型コントラストの原子像を得ることができた。得られたコントラストの正確な解釈については研究を進めている。一方で、Ti L2,3-edgeにおけるマッピングではペクトルの全エネルギー範囲を積算した通常の元素マップにおいてもTi原子が楕円体状の異方的なコントラストとして観察されることがわかった。この結果は、先行研究による結果と異なるものであったが、マルチスライス法を用いた詳細な理論計算による解釈によって、Rutile型構造の特異な結晶構造とEELSの非弾性散乱ポテンシャルの非局在性によって、この異方的コントラストが説明できることを示し、Ti L2,3-edgeでは電子軌道の異方性が反映されていないことが明らかとなった。本研究結果は顕微鏡学会誌が発行しているMicroscopy誌に受理され、Editor's Choiceにも選ばれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初本研究を始めるきっかけとなった電子軌道の可視化の可能性について、過去の研究の追試を行い、必ずしも電子軌道に関する異方性が顕微鏡像に反映されるわけではないことの重要性を実証できたことは、電子軌道可視化に関する基礎研究を進めるうえで重要な知見となった。また、これまで開発してきた手法が他の材料においても応用可能であることを実証できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、実験的実証研究と元素マップの理論計算による解釈を行ったが、今後はELNESを考慮した場合の像コントラストの理論的解釈に着手することで、実験と理論両面から本手法の発展を図る。
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