2022 Fiscal Year Annual Research Report
モアレ構造中の光励起された電子ダイナミクスに関する分光学的研究
Project/Area Number |
22H01960
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
荒船 竜一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (50360483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 紀明 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (50252416)
石田 浩 日本大学, 文理学部, 教授 (60184537)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | レーザー光電子分光 / 表面超構造 / 電子ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
異なる周期をもつ2次元系を重ね合わせたとき、元来の系が持つ格子間隔より長周期のモアレ構造が生じる。電子はそれぞれの2次元系で動いていた状態とは異なり、長周期構造によって導入されるモアレ・ポテンシャルに束縛され、バンド構造が変調される。その結果、光励起電子のダイナミクスやエキシトン形成など系の光学特性が変わると期待される。運動量空間における価電子・伝導帯両方の電子特性と、実空間におけるモアレ・ポテンシャル分布の相関は、モアレ構造とその光学特性の関係を理解する上で重要である。本研究は二光子光電子分光と走査型トンネル顕微鏡、実験と直接比較できる半無限固体表面の密度汎関数計算による理論解析を駆使して、電子バンド構造と光励起電子の緩和過程、およびモアレ・ポテンシャルの空間分布を調べる。これらの関係を明らかにすることによって、モアレ構造を用いた光学特性の定量的なチューニングに必要な指導原理が与えられる。 今年度は、表面系としてXe/Ir(001)について二光子光電子分光を行い解析した。通常のスパッタリング・アニーリングサイクルではIr(001)-(5x1)となることが知られている。この表面にXeを蒸着して仕事関数を下げ、鏡像準位の観測に成功した。(5x1)表面では、バンド・ギャップが観測された。このIr(001)-(5x1)に水素処理、酸素処理を行うことによってIr(001)-(1x1)となる。あわせてXe/Ir(001)-(1x1)についても二光子光電子スペクトルを測定し、このエネルギーギャップが消失することを発見した。この結果は超構造に由来するポテンシャルの変化に起因した電子ダイナミクスの変化によると解釈でき、解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンプル準備にいくつかの問題が発生し、実験装置の修理等で一定程度の時間がとられてしまったが、概ね当初の計画通りに、研究は推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
二光子光電子分光はフェムト秒オーダの高い時間分解能で励起電子・ホールの緩和過程を測定できる特長を持つ。上述したようにモアレ・ブロッホ・バンドはオリジナルの電子バンドに比べフラットである。モアレ・ポテンシャルに由来するエネルギー・ギャップの形成も併せて考えると、伝導帯におけるモアレ・ブロッホ・バンド中の電子は寿命が長いと期待できる。励起電子の緩和時間の実時間測定を通してこの仮説を検証する。
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