2022 Fiscal Year Annual Research Report
尿路結石の組成・構造の高分解イメージング: 結石成長を加速する結晶相転移現象解明
Project/Area Number |
22H01971
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
丸山 美帆子 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (20623903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 和文 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (40346185)
中嶋 誠 大阪大学, レーザー科学研究所, 准教授 (40361662)
吉川 洋史 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (50551173)
岡田 淳志 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (70444966)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | バイオミネラリゼーション / 結晶成長 / 結晶多形 / 相転移 / 尿路結石 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、尿路結石の巨大化および固化を加速するキラー反応が、シュウ酸カルシウム(CaOx)の準安定相(シュウ酸カルシウム二水和物:COD)から安定相(シュウ酸カルシウム一水和物:COM)への相転移であるという仮説を証明することを目的としている。 結石中で準安定相(COD)から安定相(COM)への相転移が起こっており、これが結石の固化 を加速させるメカニズムの詳細を明らかにするために、結晶相転移の高分解観察を行い、相転移ダイナミクスを調べる。そのために、結晶表面をナノメートルオーダーで詳細観察するのに適した数百マイクロメートル角程度の大きな単結晶の育成を試みた。また、観察の基本技術として、「溶液中」において結晶表面 のナノメートルオーダーの凹凸の変化を視覚化することができる共焦点レーザー微分干渉顕微鏡(LCM-DIM)の新たな構築を目指した。しかし、当初予定していた光学系では、溶液中における収差を十分におさえて微分干渉能を発揮できる光学系が構築できないことが分かり、顕微鏡の構築を一時中断して次年度に続きを行う状況となった。確率論的な現象でもある相転移は、応募者が分担研究者の吉川と共に開発してきたフェムト秒レーザーによる結晶マニピュレーション技術の応用により、強制的に相転移を引き起こす技術の開発を行った。シュウ酸カルシウムでは十分なサイズの結晶が得られていないため、モデル物質としてグリシンなどの結晶を対象として検討を重ねたところ、所望の場所とタイミングで準安定相から安定相へと相転移を促すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
人由来サンプルの分析およびこれを用いたEx-situ相転移実験などは順調に進んだが、本研究で実施する「水溶液中におけるシュウ酸カルシウム(CaOx)結晶の相転移のリアルタイム観察系」を構築するための顕微鏡および微分干渉ユニットの選定と購入が難航した。その理由として、水溶液中で反射率が低い結晶の表面を見ようとした時、収差を補正仕切れずに微分干渉の効果が低くなってしまったことがある。そのため、改めて顕微鏡の選定を行うために、各メーカーとの打ち合わせ、デモ実験などを繰り返すこととなった。将来的に、光学系にラマン分光の系を構築することも考慮し、それらの改造ができる顕微鏡として候補機種の選定が完了した。この購入に関しては2022年度中には間に合わせることができず、2023年度に購入完了および装置改造を進める予定となり、予算の繰越申請を行った。 また、CaOx相転移実験を実施するための大型結晶育成を試みたが、安定相(COM)、準安定相 (COD)共に従来報告よりも大型(マイクロマイクロメートル角程度)の結晶は得られるようになったが、表面観察に適した数百 マイクロメートル角の結晶を得るには至っておらず、次年度以降の課題となった。確率論的な現象でもある相転移は、応募者が分担研究者の吉川と共に開発してきたフェムト秒レーザーによる結晶マニピュレーション技術の応用により、強制的に相転移を引き起こす技術の開発を行った。シュウ酸カルシウムでは十分なサイズの結晶が得られていないため、モデル物質としてグリシンなどの結晶を対象として検討を重ねたところ、グリシンの準安定相(β相)から、安定相(α相)へと所望の場所とタイミングで相転移を促すことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き、LCM-DIMに偏光観察系を組み合わせることで、結晶相の変化を可視化可能なシステムを構築し、これを用いて相転移の高分解能観察を実施する。 実施するための課題として、まずは観察に適したサイズ(100 μm角以上)のCOD、COTの合成条件を再度検討する。これまでも、偶然的に大型な単結晶が得られた際に観察を進めて来たが、この再現性を高めて必要なデータを取得できるようにする。また、現在遅れている観察装置の改造をできる限り加速する。 一定以上の結晶が得られたら、まずはタンパク質を添加していない条件において、 結石中で相転移が起こるタイムスケール、および相転移で作られる結晶組織を調査する。なお、COD結晶においても所望の場所とタイミングで行う予定である。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] 尿路結石の内部構造からみたESWL破砕様式の違い2022
Author(s)
道端 詩, 丸山 美帆子, 杉浦 悠紀, 濱本 周造, 田尻 理恵, 大橋 一也, 河合 辰哉, 岡田 朋記, 吉村 侑大, 吉川 洋史, 高野 和文, 岡田 淳志, 吉村 政志, 安井 孝周, 森 勇介
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Journal Title
日本尿路結石症学会誌
Volume: 21
Pages: 100~101
Peer Reviewed
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[Presentation] High-Speed Visualization of Concentration Field Associated with Laser-Induced Crystallization Process of an Anthracene2022
Author(s)
Mihoko Maruyama, Yuka Tsuri, Hiroshi Y. Yoshikawa, Katsuo Tsukamoto, Takashi Onuma, Ryutaro Shimada, Tomohiko Tateshima, Kazufumi Takano, Hiroaki Adachi, Shigeyoshi Usami, Masayuki Imanishi, Masashi Yoshimura, Yusuke Mori
Organizer
16th International Conference on Laser Ablation (COLA2021/2022)
Int'l Joint Research
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[Presentation] 尿路結石の内部構造からみた ESWL破砕様式の違い2022
Author(s)
道端詩, 丸山美帆子, 杉浦悠紀, 濵本周造, 田尻理恵, 大橋一也, 河合辰哉, 岡田朋記, 吉村侑大, 吉川洋史, 高野和文, 岡田淳志, 吉村政志, 安井孝周, 森勇介, METEOR Projec
Organizer
日本尿路結石症学会第32回学術集会
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[Presentation] 尿路結石;形成機構の解明に向けた シュウ酸カルシウム結石における結晶相転移観察2022
Author(s)
道端詩, 丸山美帆子, 吉村政志, 田中勇太朗, 田尻理恵, 吉川洋史, 高野和文, 岡田淳志, 安井孝周, 宇佐美茂佳, 今西正幸, 森勇介
Organizer
第51回結晶成長国内会議