2022 Fiscal Year Annual Research Report
高Q値フォトニック結晶ナノ共振器結合系の高速電気制御による光の動的制御の研究
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22H01988
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅野 卓 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30332729)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フォトニック結晶共振器 / 電気制御 / 光転送 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに高Q値フォトニック結晶共振器やその結合系に光を保持している間に屈折率分布を変化させることで、光を動的に操作する技術を提案し、その実証に取り組んできた。これは物理的に興味深いだけでなく、シリコンチップ上での光バッファメモリー、光波長変換、光の時間反転などの実現につながる有望な技術である。しかし従来、屈折率制御はチップ外部から光パルスを照射することでキャリアを励起する手法で行っており、その光源も含めると制御系が巨大になることや、複数の個所を任意のタイミングで制御するような複雑な制御ができないなどの課題があった。そこでフォトニック結晶共振器結合系に面内p-i-n構造を導入して電気的に屈折率を高速に制御できる機構を付加することを検討し、ごく最近その実現に成功した。しかしながら、プロセスの複雑化に伴う汚染、結合共振器やp-i-n構造が十分に最適化できていないことなどの課題が残っている。 そこで本年度は電気的屈折率制御機構導入のために複雑化したプロセスに伴う共振器の汚染の抑制方法を検討した。より具体的には(a)プロセス時に共振器領域を汚染から分離するための保護膜の利用、および(b)作製後の共振器の表面の清浄化の2つを中心とした検討を行った。また電極材料をAlからAu/Crへ変更することで、最終工程であるドライHFによる下部SiO2層の除去の直前に、弱い酸洗浄を行って表面を清浄化するプロセスも導入した。さらにAu/Cr電極への変更によりワイヤーボンディングの温度が低下することで、この工程における汚染も低減できた。これらの検討の結果、これまでは200万程度以下であった電気制御機構付きの結合共振器系のQ値が、その2倍程度の400万程度まで向上するという大きな成果を得た。 また共振器Q値を保ちながら共振器間結合定数を増大させる試みに関しても、検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、プロセスの詳細な検討を行った結果、電気的制御機構を導入し、かつICパッケージに載せて電気信号用のワイヤーボンディングまで行った状態で、従来の2倍程度の高いQ値の共振器結合系を実現することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はp-i-n構造の最適化による制御用共振器の波長変化速度の高速化と、共振器間結合構造の最適化による共振器間結合定数の増大を目指して研究を行う。そして、さらなる損失の低減も並行して進める。このようにして作製した3共振器結合系を用いて、より高速で高効率かつ光保持時間の長い光転送を実現する。また、高周波変調による光相反的な動的結合の形成などの、新たな光制御手法の検討も行う。
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Research Products
(9 results)