2023 Fiscal Year Annual Research Report
Spatial and temporal super-resolution method for revealing quantum cooperative processes in semiconductor nanostructures
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22H01990
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田原 弘量 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (20765276)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ナノ構造半導体 / 光物性 / 量子干渉 / 超解像 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子コヒーレンスを利用した新しい分光法を開発し、集団量子システムにおける協奏的な量子光機能の発現メカニズムを解明することが本研究の目的である。ナノ構造半導体を精密に配列して結合させた超構造体では、ナノ粒子間の量子協同過程によって集団として位相のそろった状態が生み出されるため、光信号や電気信号が強まると期待される。本研究ではコヒーレンス形成過程を可視化し、光放出やキャリア生成における集団ナノ構造体の量子協同過程の全貌を解明する。本年度は、ナノ粒子結合膜における量子光電機能の計測を行った。コロイド半導体ナノ粒子は溶液中で凝集することを防ぐために、リガンド分子で覆われた構造を有している。ナノ粒子の結合膜を作製するには、このリガンド分子を短鎖分子で置換して、ナノ粒子同士を近接させることが必要になる。そこで、長さの異なるアルカンジチオールによってナノ粒子間距離を変えた試料を作製し、光電流量子干渉分光を行った。開発したこの手法では、位相を制御した光パルスによって光生成したエキシトン系の干渉パターンを計測することで、高次の非線形応答を精密にとらえることができる。リガンド分子の長さを変えながら光電流の干渉信号を計測することで、分子の長さが短くなるにつれて非線形な光電流信号が増大することを観測した。励起強度に対する依存性を計測することで、隣接するナノ粒子が協同的に応答することで信号の増大現象が生じていることを明らかにした。さらに、ナノ粒子薄膜における超高速光電流応答の計測を行った。エキシトンによる光電流に加えて、より速い応答としてトリオンに起因した光電流を計測することに成功した。トリオンによる光電流は印加電場に応じて強くなるため、多電子状態を利用した超高速光電制御につながる重要な現象を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
集団量子系における量子協同過程の解明を目指して、新しい分光法の開発と集団ナノ粒子結合系の作製を進めている。光電流量子干渉分光システムを構築することで、光励起によってナノ粒子結合系に生じる光電流信号を計測した。ナノ粒子間距離を制御することで非線形光電流が増大することを観測し、ナノ粒子間の量子協力過程によって光電流信号が強められるメカニズムを明らかにした。また、顕微分光のシステムを構築し、単一のナノ粒子超構造体からの発光スペクトルを測定することに成功している。これらの集団ナノ構造体が引き起こす光量子機能として発光増強や光電流増幅を観測し、その発現メカニズムの解明に向けて研究を進めており、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
光励起した集団ナノ粒子で生じる電子状態間のコヒーレントな協同過程を計測するために、分光システムの開発を進める。これまでの研究によって、レーザーパルス光の位相制御を利用した光電流量子干渉分光法を開発し、結合ナノ粒子薄膜の光電流計測と高次の量子コヒーレンスの計測に成功した。次年度は、集団ナノ粒子の協奏的光機能として集団発光増強メカニズムの解明を目指す。顕微分光システムの開発を進め、ナノ粒子超構造体の顕微発光計測と高分解能サイズ識別を組み合わせたシステムを構築する。
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