2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22H01994
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
太田 泰友 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (90624528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩本 敏 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (40359667)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ツイストロニクス / フォトニック結晶 / モアレフォトニック結晶 / 微小共振器 / ナノレーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、半導体モアレフォトニック結晶を対象として光ツイストロニクスを開拓し、新しい光閉じ込め機構および光系特有のツイスト物理を探求している。研究初年度は、理論解析、数値計算、デバイス設計、デバイス作製技術の基礎的な条件出しを進めた。 (1)光ツイストロニクス系の理論解析:もっとも簡便なモアレ系として1次元系を調べた。強束縛近似により2層1次元モアレ系をモデル化し、バンド構造を調べた。フラットバンドにおいて波動関数の局在が発現することを確認した。また光グラフェン2層積層系の基本モデルを用いフラットバンドの出現や局在の有無などを様々なパラメータ下で探索した。 (2)光ツイストロニクス系の数値解析:有限要素法、FDTD法、平面波展開法を駆使して、1次元二層モアレ系および二層光グラフェンにおける光局在を調べた。1次元系では、フラットバンド局在の確認ができた。2次元系においても、2層・単層構造の双方において、空間閉じ込めは強くないもののフラットバンドが発現することを確認した。2度のツイスト角で光通信波長帯において局在モードを示す単層構造の設計を行った。 (3)モアレフォトニック結晶の作製:作製に用いる転写プリント法の高度化に向けた装置の改良を進めた。操作ステージの制御方法を見直すとともに、標準的なPDMS以外の転写スタンプを探索した。PVCを用いることでストレスの小さい遅いピックアップでも試料が持ち上がることを確認した。また、InP系材料をベースとした単層2次元モアレフォトニック結晶の作製にも取り組んだ。電子線リソグラフィーやドライエッチングの条件出しを進めたほか、ウェットプロセスの開発も行った。 (4)光学評価実験:光通信波長帯における顕微分光装置の立ち上げを進めた。作製した試料の簡易的な光学測定を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論解析・数値計算が順調に進展し、光閉じ込めの強いモアレフォトニック結晶を実現するための基礎的な条件を明らかにした。また、目標の光通信波長帯において共振器が可能な単層モアレ光閉じ込め構造を設計した。装置トラブルにより素子作製プロセスの開発が遅れたものの、総じて研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得た成果をベースに、高度なモアレフォトニック結晶の実現に向けた研究を加速する。 (1)光ツイストロニクス系の理論解析:Staggeredしたポテンシャルを導入することで、フラットバンドの形成にどのような影響がでるのかを調べる。初年度のモデルを改良・発展することで、数値的にStaggeredポテンシャルを有する1次元、2次元系の検討を行う。得られた知見を電磁界数値解析に反映する。 (2)光ツイストロニクス系の数値解析:平面波展開法を駆使して2層構造の光バンドを丁寧に解析し、バンド幅が極めて小さなフラットバンドの実現条件を探索する。特にStaggeredポテンシャルを導入することで、パラメータ依存性がどのように変化するのかを調べる。単層系においてもStaggeredポテンシャルの影響を調べ、強い光閉じ込めを示す構造を探索する。 (3)モアレフォトニック結晶の作製:単層構造についてはリソグラフィーおよびドライエッチングの条件を洗練し、損失の小さなフォトニック結晶の実現を目指す。また、転写プリント法を用いてツイスト積層構造を作製し、フラットバンド局在が実証可能な構造の実現を目指す。 (4)光学評価実験:作製した構造の低温顕微分光を進め、フラットバンド局在の観測を図るとともに、レーザー発振をはじめとする光学現象の観測に取り組む。
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