2022 Fiscal Year Annual Research Report
Nanoscopic structures for separating radioactive metal ions in liquid-liquid extraction
Project/Area Number |
22H02010
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
元川 竜平 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (50414579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青柳 登 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (80446400)
上田 祐生 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究職 (80806638)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 中性子小角散乱 / ナノ構造 / 中性子反射率測定 / クラスター / 溶媒抽出 |
Outline of Annual Research Achievements |
水相と油相間の物質移動を利用する液-液抽出分離において、複数の溶質分子がつくるナノサイズの集合構造と金属イオンの分離挙動の解明に着目した研究を進めた。4価のジルコニウムイオンを用いて核燃料再処理プロセスを模擬した分離システムについて、中性子小角散乱測定とX線吸収広域微細構造測定を行ったところ、油相中では硝酸ジルコニウムとリン酸トリブチル(TBP)による抽出錯体がクラスター構を形成することが明らかにされていた。このクラスター形成には、水素結合を中心とした分子間力が作用していると考えられていたが、それだけではクラスターを形成する抽出錯体の会合数を決定する因子や、硝酸、水分子の関与を明らかにすることができなかった。この点を明らかにするため、英国マンチェスター大学のAndrew Masters教授と共同で密度汎関数理論(DFT)計算と分子動力学(MD)計算を用いた検討を行った。その結果、抽出錯体のクラスター形成には、錯体の立体異性体の寄与を考慮する必要があることを明らかした。中心金属に対するTBPの配位方向が対象であればトランス体、非対称であればシス体になるが、シス体はトランス体よりも疎水部が表面に露出するためクラスターを形成しやすい傾向を示した。トランス体とシス体で、1錯体の自由エネルギーに大きな差は現れなかったが、クラスター形成時には十分なエネルギー差が生じることが示唆された。今後、構造科学的実験結果との比較に加え、金属イオンの分離特性との関係を詳細に考察する必要がある。また、液-液界面とバルク油相内においてマロンアミド化合物がつくるナノ構造が、金属イオンの分離速度と分離選択性に与える影響についても検討を行っている。ここでは、重水素化マロンアミドの合成方法を確立することに成功している。次年度以降の中性子反射率測定を用いた構造解析にこれらの物質が利用される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の見通しに沿って種々の中性子・X線小角散乱法を利用した構造解析を行った。これに加え、計算機シミュレーションを用いた分析も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
抽出錯体がつくるナノサイズのクラスター構造が金属イオンの分離挙動に与える影響を明らかにするため、中性子・X線散乱測定の結果と計算機シミュレーションを組みあわせた検討を進める。特に、液-液界面とバルク油相でのナノ構造がどのように金属イオンの分離速度や選択性に寄与するかに着目した検討を進める。
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