2023 Fiscal Year Annual Research Report
事故耐性Fe-Cr-Al合金における高Cr脆化相の照射下シミュレーション技術開発
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22H02013
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
阿部 陽介 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, マネージャー (50400403)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鵜飼 重治 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 客員研究員 (00421529)
山下 真一郎 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (10421786)
佐々木 泰祐 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 主幹研究員 (30615993)
大久保 成彰 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, リーダー (60391330)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 事故耐性燃料被覆管 / FeCrAl合金 / イオン照射 / 照射相関 / フェーズフィールド法 |
Outline of Annual Research Achievements |
R4年度は14種類のFeCrAl合金を作製し、3水準の損傷速度で350℃にてFeイオン照射を行い、0.3 dpaデータを取得した。R5年度は照射実験を継続し、0.8 dpaデータを取得した。また、形成したCrリッチ析出物の3Dアトムプローブ測定を行うとともに、Crリッチ析出物のサイズ・数密度・体積率などの定量評価のための解析プログラムを独自開発した。これにより、Crリッチ析出物の形成に対して、Cr組成は促進・Al組成と照射速度は抑制に働くことを示すとともに、Crリッチ析出物の体積率の重回帰分析により、各変数間の交互作用を明らかにした(日本金属学会2023年秋期講演大会にて口頭発表・論文投稿中)。また、予備的な電子顕微鏡観察を行い、3Dアトムプローブ測定と同様のCrリッチ析出物の存在を確認した。 また、イオン照射で用いた14種類のFeCrAl合金に対する350℃及び450℃での熱時効実験を行い、ビッカース硬さ試験を行った。この結果に先行研究データを加えて機械学習モデルを作成し、各変数の影響を定量評価した。これにより、熱時効下では、ビッカース硬さの抑制に効くAl添加が、少量添加ではむしろ促進に効くことが分かった。その要因を第一原理計算により検討した結果、Crリッチ析出物の安定性がAl添加量と析出物サイズに依存することが示唆された(日本金属学会2024年春期講演大会にて口頭発表・論文投稿準備中)。 イオン照射下でのCrリッチ析出物の形成挙動に関するフェーズフィールド計算モデル開発として、R4年度に開発したFeCr合金に対する擬スペクトル法による3次元モデルを、R5年度はFeCrAl合金に拡張した。ここで、フェーズフィールド計算に必要な3元系合金のギブスの自由エネルギー式は、最適化した3原子間相互作用項を適用した定式化を用いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R4年度は、中性子照射条件でのCrリッチ析出物の形成挙動を合理的に予測するために、損傷速度を2桁振ったイオン照射実験マトリクスを考案し、低損傷量(0.3 dpa)でのデータを取得した。R5年度は、研究計画通り、同じ照射条件での照射実験を継続することにより、高損傷量(0.8 dpa)でのデータの取得を完了した。さらに、照射によるCrリッチ析出物の形成挙動を評価するため、3DAPを用いたCrリッチ析出物のサイズ、数密度、体積率などの測定も予定通り実施した。この際に、各測定量の算出のための独自のプログラム開発を行うことにより、Crリッチ析出物の形成に及ぼすCr組成・Al組成・照射速度の影響評価を、当初の実施予定よりも大きく深掘りすることが可能となり、重回帰分析による各変数間の交互作用の定量化に発展させたことは想定以上の進捗である。また、Crリッチ析出物の形成と照射欠陥の形成挙動の関連性を電子顕微鏡観察に関しては、実施中に判明した技術的課題を解決し、3DAPで検出したCrリッチ析出物の存在を確認した。 また、イオン照射の影響を明らかにするための熱時効実験に関しては、当初の計画よりも試験温度を増やして実施した。さらに、先行研究データを追加したデータベース作成により、機械学習モデルの作成を行い、Crリッチ析出物の形成の促進・抑制に寄与する変数の重要度や交互作用について明らかにした点は当初の計画以上に進展して得られた成果である。さらに、これらの促進・抑制効果に関する第一原理計算による原子レベルでの理解を深めた点も当初の計画を大幅に上回る成果である。 イオン照射下でのα′相の形成挙動に関するシミュレーションモデル開発では、計画通りにFe-Cr合金系からFe-Cr-Al合金系に拡張した。これに照射効果を取り入れた定式化の実装はやや遅れているものの、文献調査を進めつつ実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
R6年度は、イオン照射実験を継続実施し、さらなる高損傷量(1.8 dpa)データを拡充することで、FeCrAl合金中でのCrリッチ析出物形成の促進・抑制挙動の解明に資する。0.3 dpaデータに対して実施済みの3Dアトムプローブ測定を0.8 dpaデータに対して実施し、Crリッチ析出物の形成挙動に対する照射量の影響を詳細分析する。この際に、本年度開発した機械学習モデルを適用することにより、Crリッチ析出物形成の促進・抑制に関する各変数の効果を定量化するとともに効果的な可視化手法により現象の理解を深める。R6年度の後半には、温度の影響を明らかにするため、これまでの350℃に加えて450℃でのイオン照射実験を実施する。また、イオン照射との比較のための熱時効試験を継続実施することにより、Crリッチ析出物の形成挙動に与える照射の効果を明確化する。イオン照射実験および熱時効実験により得られたデータは、各条件の関数としてデータベース化し、照射下でのフェーズフィールド法のモデル作成及び検証に資する。 また、R5年度に予備的なデータを取得した電子顕微鏡観察に関して、R6年度は観察条件の最適化により、各照射条件データにおけるCrリッチ析出物と照射欠陥を定量化し関連性を検討する。さらに、ハイスループット測定が可能なコンビナトリアル試料を試作し、熱時効及びイオン照射に関する予備実験を行う。 照射下でのフェーズフィールド法に関しては、構築したFeCrAl合金の擬スペクトル法による3次元モデルに照射の影響を取り入れた定式化を行い、各条件での実験データの再現計算を行う。その際に、これまでに構築してきた熱時効実験及び照射実験のデータベースを活用してモデルの検証及び高度化を進める。これにより、軽水炉環境下での中性子照射データの再現を可能とする数値予測モデル構築への展開を目指す。
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Research Products
(2 results)