2022 Fiscal Year Annual Research Report
核融合発電を志向した材料科学に基づく薄膜ナノ結晶制御法の開発と高強度化への展開
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22H02019
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
寺西 亮 九州大学, 工学研究院, 教授 (70415941)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 昌睦 福岡工業大学, 工学部, 教授 (80346824)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 酸化物超伝導薄膜 / ナノ組織制御 / 薄膜結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
化石資源に頼らない発電方法として有望視される核融合発電では高温のプラズマを強い磁力で閉込めて制御する必要があり、その制御方法として超伝導技術が不可欠とされており、抵抗ゼロで大電流通電可能な超伝導線材を用いた大型で強磁場を発生できる超伝導コイルが求められている。本研究は、将来の核融合発電を志向し、磁束ピン止め点を超伝導薄膜線材中に導入するための薄膜ナノ結晶の制御法を確立することを研究目的としている。 磁束ピン止め点を含んだ薄膜がスパイラル成長する際、化学ポテンシャルの変化は膜成長時のピン止め点の核生成頻度に大きく寄与することから、ピン止め材料の薄膜結晶中での成長方向に与える影響は大きいと考えられる。そこで、当該年度は膜の成長駆動力に寄与する成膜温度を変化させ、得られる試料の微細組織を観察して駆動力との相関を考察した。 成膜時の温度を制御した結果、超伝導薄膜中に形成した磁束ピンの成長形態を制御することができ、温度を50℃低くすることで膜中に形成する磁束ピンの直径が約1/3となり(4-6 nm)、その結果として、膜中に形成される数密度を約7倍に高密度化することができた。また、成膜時の温度を変化させることで磁束ピンの膜中での成長方位を変化させることができ、母相のc-軸方向に対して±10°程度傾けて成長させることができた。この磁束ピン結晶の膜中での高密度化及び直径の縮小化は、低温成長に伴う構成種の核生成頻度の向上及び臨界核半径の縮小化に起因していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の途中で、機器の不測の故障により本実験における試料作製実験を一時的に実施することができない状況となり、装置の修理に数か月を要するという予期していなかった事象が起こったが、装置修理後は当初予定していた実験内容を進めることができるようになり、その後は順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目は、初年度の薄膜成長時の駆動力に寄与する成膜温度因子の影響を受け、過飽和度に影響を及ぼす成膜因子を制御してピン止め点の傾斜成長機構を考察する。成膜因子としては具体的に「酸素圧力」および「ピン止め点材料の添加濃度」とする。 その後、3年目は前年度までに得られた実験結果の検証実験を行うとともに、それらの結果から薄膜中でのピン止め点の成長モデルの構築を行う。膜表面の成長界面のピン止め点サイトでは、原子の付着頻度が低下してステップの成長が遅れるものと考えられ、この時、ステップのピン止め効果(ピン止め点の母相の成長抑制効果)が生じるものと推察している。母相のステップ前方の凹部前方での成分の濃化が局所的な過飽和度の増大となり、これがピン止め中心の傾斜成長の駆動力となるものと考えられ、この議論の妥当性を評価しながらモデルを構築する。
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