2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22H02027
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
山口 祥一 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60250239)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 水 / 氷 / 振動分光 / 分子動力学 / 和周波発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
凝縮相の水の振動分光の実験と理論計算を推進した.まず,TIP4Pモデル用の振動分光マップが他のTIP4Pファミリーのモデルにも転用可能であることを理論計算と実験によって示した(“Transferability of vibrational spectroscopic map from TIP4P to TIP4P-like water models”, J. Chem. Phys. 158 (2023) 136101).次に,非イオン性および双対イオン性脂質/水界面の局所的pHをヘテロダイン検出電子和周波発生によって決定し,生体膜の界面pHを予測する統一的方法を確立した(“Local pH at nonionic and zwitterionic lipid/water interfaces revealed by heterodyne-detected electronic sum-frequency generation: A unified view to predict interfacial pH of biomembrane”, J. Phys. Chem. B 127 (2023) 5445-5452).また,TIP4Pファミリーのモデルが純水表面をどの程度正確に再現しているのか,ヘテロダイン検出振動和周波発生の観点から議論した(“Appraisal of TIP4P-type Models at Water Surface”, J. Chem. Phys. 159 (2023) 171101).さらに,和周波発生の非共鳴バックグラウンドの複素位相の問題を理論的に考察した(“Complex Phase of the Nonresonant Background in Sum Frequency Generation Spectroscopy”, J. Chem. Phys. 159 (2023) 224708).また,新しい重水モデルがどの程度振動分光に利用可能かを詳細に調べた(“Theoretical and experimental OD-stretch vibrational spectroscopy of heavy water”, J. Chem. Phys. 160 (2024) 104504).最後に,クラスレートハイドレートを含む結晶氷の構造を振動分光の実験と理論によって調べた(“振動分光の実験と理論計算による結晶氷の分子構造研究”,日本結晶成長学会誌 51 (2024) 01-10).
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展しているとする理由は,凝縮相の水の振動分光の実験と理論計算を予定通りに推進することができたからである.まず,TIP4Pモデル用の振動分光マップが他のTIP4Pファミリーのモデルにも転用可能であるという価値ある性質を実証することができた(J. Chem. Phys. 158 (2023) 136101).次に,主に非イオン性および双対イオン性脂質からなる生体膜の局所的pHについての新しい知見と方法論を得た(J. Phys. Chem. B 127 (2023) 5445-5452).また,TIP4Pファミリーのモデルが純水表面をどの程度正確に再現しているのかをヘテロダイン検出振動和周波発生の観点から明らかにすることができた( J. Chem. Phys. 159 (2023) 171101).さらに,和周波発生の非共鳴バックグラウンドの複素位相の問題を理論的に考察することによって,長年の問題に決着をつけることができた(J. Chem. Phys. 159 (2023) 224708).また,新しい重水モデルがどの程度振動分光に利用可能かを詳細に調べたことによって,今後このモデルを活用できる見通しがたった(J. Chem. Phys. 160 (2024) 104504).
|
Strategy for Future Research Activity |
TIP4Pモデル用の振動分光マップが他のTIP4Pファミリーのモデルにも転用可能であるという価値ある性質を実証することができたので(J. Chem. Phys. 158 (2023) 136101),水の高温高圧相など様々な相にモデルを適用して振動スペクトルを理論計算し,実験結果と比較検討を行う.次に,主に非イオン性および双対イオン性脂質からなる生体膜の局所的pHについての新しい知見と方法論を得たので(J. Phys. Chem. B 127 (2023) 5445-5452),この局所的pHと脂質界面の振動スペクトルの関係を実験と理論計算によって調べる.また,TIP4Pファミリーのモデルが純水表面をどの程度正確に再現しているのかをヘテロダイン検出振動和周波発生の観点から明らかにすることができたので( J. Chem. Phys. 159 (2023) 171101),今後のモデルの改良の見通しを立てたいと考えている.また,新しい重水モデルがどの程度振動分光に利用可能かを詳細に調べたことによって,今後このモデルを活用できる見通しがたったので(J. Chem. Phys. 160 (2024) 104504),さらに半重水のモデルを開発するとともに,水-重水系のH/D量子相関についての長年の問題に実験と理論計算によって取り組む.
|