2022 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫から何を学ぶか:顕微赤外円二色性分光法による昆虫翅中の超分子キラリティ解析
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22H02033
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
佐藤 久子 愛媛大学, 理学部, 研究員 (20500359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川村 出 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (20452047)
吉田 純 日本大学, 文理学部, 准教授 (60585800)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 顕微赤外二色性分光法 / 昆虫の翅 / タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の波数軸に時間軸と空間軸を加え,顕微機能を備えた多次元赤外円二色性分光法(多次元VCD法と命名)を開発した。高輝度の赤外光を発する量子カスケードレーザーを用いて空間分解能100 μmを達成した。顕微手法を用いた生体試料の例として,昆虫翅に適用した。愛媛県の生物多様性センターから御提供いただいた絶滅危惧種のトンボ(ハッチョウトンボ,ナニワトンボ)やモンスズメバチなどへの応用を広げてきた。この結果,各種類の翅において,タンパク質分布が異なっていることを見出した.特にトンボの翅においては赤外の吸収があるにも関わらず,VCDシグナルを得ることができなかった.これはタンパク質の凝集割合が小さい,あるいはドメインが空間分解能以下であることを意味していると現状では考察している. アオドウガネの雌では昆虫翅の場合,大きさ100 μmの各部位(翅膜,翅脈等)ごとに種々の高次構造(コイル,β-シート,α-ヘリックス等)のタンパク質ドメインが二次元的に分布していることを見出した。このように翅の生体試料中のミクロキラルドメインの顕微測定に成功し,平均の高次キラル構造だけでなく,局所的な超分子キラリティの分布を捉えることができた。アオドウガネの翅のタンパク質構造は雌雄の差がないことを明らかとした。 ヒトカルシトニンペプチドフラグメントDFNKFを合成し、アミロイド線維形成によるVCD強度の増強を検出することに成功した。また、アンチポードとして全てD体のアミノ酸で合成したエナンチオマーにおいて、VCDパターンが反転した。このような結果からDFNKFの超分子キラリティーを明らかにし、アミロイド線維構造と線維多型に関連する顕著な特性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しいサンプルも提供をうけて、昆虫の種によって昆虫の翅のタンパク質分布を異なっていることを見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
高次構造の異なるタンパク質が不均一に分布していることが,生物にとってどのような意味(構造的,機能的)を持っているかを明らかにする予定である。
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