2022 Fiscal Year Annual Research Report
化学反応と相転移で電子を変える―質量ゼロの電子を含む有機伝導体の創製と未知の物性
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22H02034
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
内藤 俊雄 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (20227713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 敏宏 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10262148)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 線形分散 / バンド計算 / 強結合近似 / 有機トポロジカル物質 / 電気抵抗 / 磁化率 / 電子スピン共鳴 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は当初の研究目標に掲げたとおり、既知の有機ディラック電子系の電子構造や電子物性を明らかにした。これまでに知られている有機ディラック電子系の研究は、物質ごとに特定の測定の実験データや理論計算をもとに進められてきたため、異なる物質や異なる実験法などを俯瞰した統一的な検討はなされてこなかった。そのため、異なる研究グループ間でも報告内容や結論に矛盾が生じていた。こうした問題を整理するために行った今回の科研費による研究成果は、これまで考えられていた電子構造に対し重要な修正点を見出したという意味を持つ。これにより、電子物性の解釈も変わり、目的として掲げていたディラック電子が通常の電子からどういう機構で生じるのか、その結果振る舞いが通常の電子とはなぜ全く異なるのかといった問題に関し、理解が進んだ意義(インパクト)は大きい。そもそも2006年ぐらいからこれまで精力的に研究がすすめられてきた有機ディラック電子系で、なぜ今になってこのような根本的な点が発見もしくは修正されたかというと、これまで理論研究が中心で、それに基づき限られた物質と磁気抵抗や核磁気共鳴など限られた実験データに基づいて解釈を急いだからである。それに対し本研究は、一連の関連物質を合成し、過去の報告に頼らず結晶構造解析、電気抵抗、磁化率、電子スピン共鳴などのより広範な電子物性データを系統的に一から検討し、全体として矛盾の無い解釈を示した。さらにそれらの実験データと照合することで、実験的に根拠のあるバンド計算(理論計算)を提示した。従って本研究成果は、こうした有機ディラック電子系のこれまでの研究成果に対して実験的根拠を与える、もしくは一部の理論を修正する役割を担う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に掲げたサブテーマは、以下のとおりであり、全て計画通り順調に進捗している。(Ⅰ)alpha-D2I3(D=ET, STF, BETS)の電子構造と光学物性 ①時間分解分光測定、②バンド計算、(Ⅱ)新しいODESの開発とそれらの電子構造、電気/磁気/光学物性 ①alpha-D2X (D = ET, STF, BETSまたはこれらの混晶、X=AuI2-, IBr2-, I2Br-, Br3-など1価の陰イオン)のタイプの新物質を合成、②単結晶X線構造解析、③電気抵抗測定、④磁化率測定、⑤時間分解分光測定、⑥バンド計算。このうち、(Ⅰ)①から(Ⅰ)②までは2022年度(初年度)で完了し、現在(Ⅱ)を行っている。これらの成果は、本報告書の論文リストにも記した通り、2022年度分だけでも、論文4報、学会発表6件などがある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に掲げたサブテーマは、以下のとおりであり、全て計画通り順調に進捗している。(Ⅰ)alpha-D2I3(D=ET, STF, BETS)の電子構造と光学物性 ①時間分解分光測定、②バンド計算、(Ⅱ)新しいODESの開発とそれらの電子構造、電気/磁気/光学物性 ①alpha-D2X (D = ET, STF, BETSまたはこれらの混晶、X=AuI2-, IBr2-, I2Br-, Br3-など1価の陰イオン)のタイプの新物質を合成、②単結晶X線構造解析、③電気抵抗測定、④磁化率測定、⑤時間分解分光測定、⑥バンド計算。このうち、(Ⅰ)①から(Ⅰ)②までは2022年度(初年度)で完了し、現在(Ⅱ)を行っている。これらの成果は、本報告書の論文リストにも記した通り、2022年度分だけでも、論文4報、学会発表6件などがある。ここまでの結果を鑑みて、(Ⅱ)の①のターゲット物質の選定に生かし、今後さらに興味ある新物質を合成して、その電子物性を明らかにしていく。
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Research Products
(10 results)