2022 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the mechanism of lipid raft formation using Marangoni convection
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22H02041
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
矢野 陽子 (藤原陽子) 近畿大学, 理工学部, 教授 (70255264)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ラフトモデル / マランゴニ対流 / 脂質膜 / X線散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、独自に開発した迅速X線反射率法をもちいて、流動場を作用した脂質膜の中でドメイン構造が形成される過程を観測することによって、脂質ラフトの形成メカニズムを明らかにする。具体的には、水面上に形成された多成分脂質単分子膜にパルス状のマランゴニ対流を作用して攪乱させた後、膜内相分離が起こる過程を放射光源をもちいたX線表面散乱によって追跡する。初年度にあたる2022年度は以下のような計画であった。 (1)既成の多目的型LB膜作成装置とブリュースター角顕微鏡(BAM)を導入しマランゴニ対流発生システムを付加する。→ Biolin Scientific社製KSVNIMA MicroBAMを購入した。まず、標準試料を使って装置の性能評価を行った後、マランゴニ対流発生システムを組み込んだところ、マランゴニ対流によって脂質膜が動く様子が観測された。 (2)SPring-8においてパルス流れの発生をトリガーとする時分割GIXD測定システムを立ち上げる。→ GIXD測定によって、リン脂質膜の面内秩序構造の観測に成功した。 (3)2種類のリン脂質/コレステロール混合系の相挙動をBAMにより観測する。任意の温度と膜組成について網羅的な観測を行い、X線表面散乱で観測する三成分混合膜の組成を決定する。→ BAMについては、まだ装置の性能評価段階につき、多成分の観測は行っていない。 (4)(3)の試料について、マランゴニ対流による表面張力の自発振動を観測し、パルス流の周期や流速について検討する。→ 2種類のリン脂質/コレステロール混合系について網羅的に表面張力の自発振動測定を行い、膜弾性率と振動の振幅の関係を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度はブリュースター角顕微鏡を購入した。すでに先行研究のあるステアリン酸単分子膜や、細胞膜の構成要素であるジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)の測定を行い、実験データの再現を得ることができた。加えて、当該トラフの中でマランゴニ対流を発生させることにも成功した。これまでBAMは静置した試料の測定に限られていたが、流れのある状況での観測に成功することができたのは快挙だと思われる。 一方、実際の細胞膜は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、リン脂質の混合膜であるため、混合膜についてのマランゴニ対流測定を精力的に行って膜弾性との相関を見た。 また、SPring-8のGIXD測定に初めて成功した。動的測定には至っていないが、見通しが立った。
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Strategy for Future Research Activity |
膜の相分離とマランゴニ対流による表面張力の自発振動についての関係を明らかにする。また、観測されるドメインの成長過程もBAMによって観測する。GIXDと比較することで、ナノスケールからミクロスケールまでの階層構造を明らかにすることができると思われる。
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Research Products
(5 results)