2023 Fiscal Year Annual Research Report
軟X線超高速光電子分光法による内殻電子ダイナミクスの実時間観測
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22H02044
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Saga Industrial Promotion Organization |
Principal Investigator |
金安 達夫 公益財団法人佐賀県産業振興機構(佐賀県産業イノベーションセンター産業振興部研究開発振興課、九州シンク, 加速器グループ, 副主任研究員 (90413997)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
彦坂 泰正 富山大学, 学術研究部教養教育学系, 教授 (00373192)
和田 真一 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (60304391)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 超高速分光 / 量子制御 / 内殻電子 / 放射光 |
Outline of Annual Research Achievements |
光を用いて物質内のあらゆる電子の運動を実時間観測することは,光科学・物質科学研究の究極的な目標の一つである.本研究では分子科学研究所の放射光源UVSORで生成した軟X線のダブルパルスによる軟X線超高速光電子分光法を開発し,原子や分子の内殻空孔の時間発展をアト秒からフェムト秒域で可視化する方法を開拓する.今年度は以下の研究を行った.
(1)光多重イオン化:多電子同時計測装置を用いて軟X線ダブルパルスによる希ガス原子の光二重イオン化の観測を行った.光二重イオン化で放出された二つの電子による量子干渉をとらえることに成功した.二つの光電子が引き起こす量子干渉の観測と遅延時間による干渉操作は世界初の成果であり,現在,成果発表の準備を進めている.(2)分子解離の操作:分子の内殻励起を利用して分子解離過程のフェムト秒操作を試みた.ダブルパルスの遅延時間による解離過程の制御を示す明確なデータを得るには至らなかったが,実験条件の方向性を見出すことは出来た.次年度も再実験を行う予定である.(3)固体サンプル導入装置の開発:凝縮系物質の光電子干渉実験を行うために,電子分析機への固体サンプル導入装置を設計・制作した.製作した装置を電子分析器へ組込み,サンプル導入に問題なく使えることを確認した.(4) 極紫外光の偏光測定法の開発:放射光の特徴の一つに偏光可変性がある.本研究で用いる軟X線ダブルパルスも偏光可変であり,超高速分光や量子制御への偏光応用も興味深い.そこで気相の原子を用いた極紫外偏光計の開発にも取り組み始めた.本手法は原子の重ね合わせ状態を偏光測定に応用したものであり,ダブルパルスによる物質の量子制御技術とも密接に関連する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた研究内容はおおむね順調に進めることが出来た.とくに光二重イオン化実験の成功は多電子過程の量子干渉操作という新たな方向性を切り拓く成果である.また内殻光電子の量子干渉に関する昨年度の研究成果も論文化を急いでいる状況である.次年度へ向けた装置開発の面では,固体サンプル導入装置を予定通りに設計・制作することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では気相の原子分子に加えて凝縮系物質もターゲットとしている.気相の原子分子で確立した量子干渉の描像が固体においても成立するのか検証するために,本年度に開発した固体サンプル導入用のマニピュレータを用いて,固体の光電子干渉実験を行う予定である.すでに実験条件の選定やシミュレーションは済ませており,実験研究の遂行に大きな困難はないと見込んでいる.
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Research Products
(14 results)