2022 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on delocalized Frenkel excitons in organic semiconductor single-crystals exhibiting band transport
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22H02055
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中山 泰生 東京理科大学, 理工学部先端化学科, 准教授 (30451751)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細貝 拓也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (90613513)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 有機半導体単結晶 / エピタキシャル界面 / 角度分解光電子分光法 / 時間分解分光法 / 電子エネルギー損失分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子状態の非局在化は半導体光エレクトロニクスの駆動効率を最大化するための必要条件である。これに対し,分子固体である有機半導体では荷電キャリアおよび励起子は個々の分子に束縛されて局在化し,有機半導体の光エレクトロニクスデバイスにおいて動作効率を制約する要因となっている。一方で,分子を高秩序に整列させた単結晶試料では複数の分子に非局在化した電子状態(電子バンド)を生じる有機半導体も存在する。しかし,こうしたバンド伝導性有機半導体結晶における励起子の性質は十分に検討されていない。本研究は,エピタキシャル成長によるバンド伝導性有機p-n接合の自発形成と,そこに非局在化するキャリア・励起子の統一的な物性解明を目的とするものである。 2022年度には,専用の走査型プローブ顕微鏡装置を研究代表者機関に導入し,多くのバンド伝導性有機半導体材料について結晶作製やヘテロエピタキシャル成長条件を緻密に調整して構造評価を繰り返すことができる態勢を整えた。例えば,これを当グループが見出した「準ホモエピタキシャル」有機半導体界面試料系に適用し,高秩序界面が得られる製膜条件の探査を進め,得られた試料に対してシンクロトロン放射光(SPring-8,分子科学研究所UVSOR)を用いた高分解能表面X線回折法による精密な構造決定や角度分解光電子分光実験による電子バンド分散の測定実験を実施している。一方,研究分担者(細貝)が所有するフェムト秒レーザーを用いた過渡発光分光測定による励起子の時間発展分析も進めており,迅速かつ高感度な計測により多数の有機EL材料として期待される熱活性化遅延蛍光材料の発行特性を取得し機械学習へ適用した研究成果を報告した原著論文は,専門誌の表紙に採択されるなど注目を集めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は,専用の走査型プローブ顕微鏡装置の導入により,多くのバンド伝導性有機半導体材料について結晶作製やヘテロエピタキシャル成長条件を緻密に調整して構造評価を繰り返すことができる態勢の整備が完了した。実際に,年度後半からこれを用いて高秩序界面作製の条件探査を進めており,作製した試料に対して角度分解光電子分光による電子バンド計測を実施することにも既に着手している。加えて,年度末には窒素置換グローブボックス内に真空蒸着装置が組み入れられた専用の積層界面製造装置を他機関から譲渡されたことで,試料への大気曝露に起因する酸化不純物の生成を抑制することで極めて高純度な界面試料を調製できる準備も整いつつある。研究分担者機関においては,既存装置を用いて励起子時間発展の評価を進めるとともに,分子結晶材料の励起子特性計測に適した角度分解吸収分光計測装置の開発も進めている。一方で,研究代表者および大学院生が海外共同研究機関へ赴いて実施することを予定していた角度分解電子エネルギー損失分光実験については,状況が整わず後ろ倒しとなっている。以上を総合的に考慮し,現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題に対して理想的な試料は,目的の有機半導体分子のみが乱れなく整列している単結晶あるいはヘテロエピタキシャルp-n接合試料であり,結晶化条件の最適化による構造欠陥の最小化が求められる。まず,研究代表者機関に移管された窒素置換グローブボックス内に真空蒸着装置が組み入れられた専用装置を早期に立ち上げ,不純物生成の抑制された高純度界面の調製を可能にする。また,2022年度に引き続き,シンクロトロン放射光を用いた高分解能表面X線回折法(SPring-8)による精密な構造決定,角度分解光電子分光実験(高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリー,分子科学研究所UVSOR)により有機半導体単結晶およびヘテロエピタキシャルp-n接合における電子状態の非局在化の実証も進めていく。海外共同研究先(ドイツ ユーリヒ研究所)との角度分解電子エネルギー損失分光法の共同研究により励起状態の非局在化の実証実験については,先方機関との協議の結果,2024年度以降に実施する方向で準備を進める。 一方,非局在フレンケル励起子の生成から電荷移動励起子の形成と解離あるいは再結合に至る時間発展の追跡も重要な課題である。2023年度には,研究分担者機関に導入した装置を用いて単結晶有機半導体p-n接合の界面および両材料部分における励起子の挙動を実測評価することを試みる。これにより,励起子生成からp-n接合での電荷移動,さらに正負キャリアへと解離する過程において,非局在フレンケル励起子と通常の局在励起子とで遷移エネルギーや時定数にどのような差が生じるのか,ひいては励起子の非局在化がどのプロセスでどの程度キャリア生成効率を向上させるのか,実測結果に基づいて解明することを目指す。
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Research Products
(15 results)