2022 Fiscal Year Annual Research Report
デザイナブルな二次元ナノ空間が支配するソフトマテリアルの開発と応用
Project/Area Number |
22H02057
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
佐野 航季 信州大学, 学術研究院繊維学系, 助教 (20845763)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 無機ナノシート / 機能性ソフトマテリアル / ナノ空間 / 表面・界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
界面で挟まれたナノ空間における分子特性はバルク状態とは異なることも多いが、このような特異物性はナノ空間内に限定されており巨視的スケールに及ぶことは少ない。本研究では、無機ナノシートで挟まれたデザイナブルなナノ空間が無数に埋め込まれた「二次元ナノ空間プラットフォーム」に機能性流体を組み込むことで、革新的な機能を有するソフトマテリアルの創出を目指す。また、ナノ空間のサイズや化学的性質を制御することでナノ空間と巨視的物性の関係を体系的に調査し、ナノ空間がバルクを支配するための材料設計指針を確立する。 本年度は主に、機能性流体としてサーモトロピック液晶性を示す分子を「二次元ナノ空間プラットフォーム」に導入し、得られる異方性ソフトマテリアルの基礎的理解を行なった。まず、水に分散した酸化チタンナノシートに強磁場を印加することで実現した「一軸配向したモノドメイン構造」に対してラジカル重合を行うことで異方性ハイドロゲルへと変換した。次に、ハイドロゲル内部の水を徐々に有機溶媒に置換することで異方性オルガノゲルへと変換し、さらに液晶性分子に置換することで異方性液晶ゲルの作製に成功した。得られた液晶ゲルは温度に応答して相転移を起こす結果、光学物性や力学物性を大きくかつ可逆的に変化させることを確認した。また、ナノシートで挟まれたナノ空間において液晶性分子の配向は制御されており、この局所的な配向構造が巨視的スケールに及んでいることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に、サーモトロピック液晶性を示す分子を「二次元ナノ空間プラットフォーム」に導入し、得られる異方性ソフトマテリアルの基礎的理解を行なった。既に異方性液晶ゲルの作製に成功しており、ナノ空間おける液晶性分子の挙動と巨視的な物性の相関を体系的に調査するための準備も整っている。これは当初の計画通りであることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、引き続き、無機ナノシートで挟まれたデザイナブルなナノ空間が無数に埋め込まれた「二次元ナノ空間プラットフォーム」への機能性流体の導入と得られた機能性ソフトマテリアルの基礎的な理解を目指す。特に、無機ナノシートの種類・界面状態の影響について探索し、さまざまなナノシートの作製及び利用を予定している。これらのナノシートの自己組織化挙動・配向制御などを精査するとともに、ハイドロゲルへの埋め込み及び機能性流体を導入したソフトマテリアルの作製を行う。ハイドロゲルへの埋め込みや機能性流体の導入に関しては、作製条件によって内部構造や各種物性が変化することが分かってきており、ゲル化プロセス自体についても基礎科学的な検討を行う予定である。さらに、ナノ空間のサイズやナノシートの表面の化学的性質を制御することで、ナノ空間内部における機能性流体の挙動にどのような影響を及ぼすかを体系的に理解し、光学物性や力学物性がどのように変化するかの調査も予定している。
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