2022 Fiscal Year Annual Research Report
含窒素ポルフィリンの基礎学理の構築および機能性色素としての展開
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22H02061
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
俣野 善博 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40231592)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | モノアザポルフィリン / ジアザポルフィリン / 鋳型環化 / 酸化還元 / 芳香族性 / 金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、meso位の窒素上に置換基をもつ2種類のアザポルフィリン誘導体(5,10,15,20-テトラアリール-5-アザポルフィリンおよび5,10,15,20-テトラアリール-5,15-ジアザポルフィリン)を題材として、その合成および物性の解明に取り組んだ。前者の化合物(TAMAP)については、アザテトラピリン前駆体の鋳型環化反応を利用する新しい合成法を確立した。また、後者の化合物(TADAP)については、亜鉛錯体の脱メタル化を介するフリーベース体の効率的な合成法を確立した。いずれの化合物群においても、酸化・還元反応は可逆的に進行し、光物性が酸化状態に連動して大きく変化することを明らかにした。また、一部のTAMAP亜鉛錯体のX線結晶構造解析に成功し、アザポルフィリン環が高い平面性をもつことを確認した。参照化合物となる5,10,15,20-テトラアリールポルフィリン(TAP)とTAMAP、TADAPの酸化還元電位を比較した結果、電荷が+1増加するにつれ18π系の酸化還元電位が0.5―0.6 Vずつ正側にシフトすることが明らかとなった。一方、核磁気共鳴法と理論計算により、18π電子系を持つTAP、TAMAP、TADAPの環電流効果を比較した結果、TAMAPの反磁性環電流効果が最も小さいことが明らかとなった。この結果は、TAMAPにおけるπ電子系の分極が芳香族性に大きな影響を与えることを示唆している。さらに、TADAPフリーベースの錯形成反応を検討し、白金やケイ素の錯体が得られることを確認している。得られた成果の一部については、10件の学会発表を行ったほか、3報の論文として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、meso位の窒素上に置換基をもつ2種類のアザポルフィリン誘導体(TAMAPとTADAP)の合成と物性評価を計画していたが、いずれも鋳型環化や脱メタル化を利用して目的物を合成・単離することに成功し、得られた化合物の構造-物性相関の解明も行った。中でも、TADAPのフリーベース体を温和な条件で合成する手法を確立したことで、今後さまざまなTADAP金属錯体の合成が可能になると期待している。また、TAMAPを手にしたことで、meso位の窒素による置換がポルフィリン金属錯体の物性に与える影響を、実験面から初めて系統的に調べることができた。得られた結果については、10件の学会発表を行ったほか、3報の論文として報告済みであり、全体として研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、医療用増感剤や光触媒の開発を視野に入れ、当初の計画に沿う形で、TAMAPおよびTADAPの金属錯体の合成を系統的に行うとともに、アザポルフィリン環外周部の化学修飾法を体系化する。具体的には、臭素化・アミノ化・クロスカップリング反応を経てアザポルフィリン環のβ位にさまざまな置換基を導入し、中心金属に加え置換基の種類と置換様式がアザポルフィリンの光物性や電気化学特性に与える影響を明らかにする。また、新たに合成した金属錯体については、光増感による一重項酸素発生効率や励起状態からのエネルギー・電子移動過程を調べ、機能性色素としての潜在力を明らかにする。なお、反応中間体の検出については、必要に応じて学内外の研究者と協力して測定を行い、研究を推進していく予定である。
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Research Products
(14 results)