2023 Fiscal Year Annual Research Report
Synthesis of Macrocyclic pi-Conjugated Anthracene-Acetylene Hexamers and Their Functions and Supramolecular Properties
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22H02062
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小林 健二 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 教授 (40225503)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大環状化合物 / パイ共役 / アントラセン / 超分子化学 / 分子自己集合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、様々な側鎖Ar置換基を有する環状ヘキサ-2,7-(4,5-ジアリール)アントリレンエチニレン1ならびに1の対角位置の2箇所をブタジイン結合で置換した環状体2を合成し、物性・機能・分子集合性を探求・解明することを目的とし、令和5年度は、以下の3点に焦点を当て研究を実施した。 [1]環状体1bのアルキル側鎖の長さの効果:3,5-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)フェニル基aを側鎖に有する環状体1aは単量体として存在するが、1aよりも立体的に若干嵩高さの小さい3,5-ジヘキシルオキシフェニル基bを側鎖に有する環状体1bは、CDCl3中で単量体とπスタック自己会合二量体(1b)2の平衡混合物として存在することを見出している。今年度は、環状体1bのヘキシル基をブチル基やドデシル基に変えた環状体1c, 1dを合成し、πスタック自己会合二量体形成におけるアルキル基の長さの効果を精査した。 [2]環状体1aのブタジイン類縁体2aの性質解明:環状体2aは選択的に[10]CPPを包接することを昨年度見出した。[10]CPPはC60を包接する。そこで今年度は、C60を包接した[10]CPPを環状体2aで包接し、その会合特性を精査した。環状体2a (環状6量体)の合成の際に、副生成物として環状9量体2a'と環状12量体2a''も単離し、重合度に対する光物性を比較精査した。 [3]p-位に側鎖を有する環状体の合成とπスタック自己会合挙動:昨年度、立体障害の小さいp-オクチルオキシフェニル基eを側鎖に有する環状体1eを合成し、1eは非常に強くπスタック自己会合して会合多量体を形成することを見出した。今年度は、環状体1eの側鎖よりも柔軟性の高い(p-オクチルオキシカルボニル)フェニル基fやp-TEGオキシフェニル基gを有する環状体1f, 1gを合成し、環状体1eとのπスタック会合能を比較精査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[1]環状体1bのヘキシル基をブチル基やドデシル基に変えた環状体1c, 1dを合成した。πスタック自己会合二量体形成における会合定数Kaは、CDCl3中298 Kにおいてアルキル側鎖が短いほどKaは増加することがわかった。また、Cast filmのUV-vis吸収スペクトルでは、1dは1bと1cに比べて吸収極大波長が6 nm短波長シフトしたことから、1dはアルキル長鎖によってH会合を取り易いことが示唆された。 [2]10% CDCl3-90% CS2混合溶媒中でC60@[10]CPP、[10]CPP@2a、C60@[10]CPP@2aのKaを算出し、C60が2aの[10]CPP包接に与える影響を調べた。298 KにおいてC60@[10]CPPはKa = 107,400 M-1、[10]CPP@2aはKa = 4,250 M-1、C60@[10]CPP@2aはKa = 5,590 M-1となり、2aの[10]CPP包接は、C60存在下ではKaは約1,000 M-1増大した。 また、環状6量体2a、環状9量体2a’、環状12量体2a”の吸収極大波長は環拡大に伴い1 nmずつ長波長シフトした。また、2a”のモル吸光係数は2aの約2倍でアントラセン環の数とほぼ比例したが、2a’は平面性π共役の立体配座を取りにくいため、2a’のモル吸光係数は2aよりも小さくなった。 [3]立体障害の小さいp-オクチルオキシフェニル基eを側鎖に有する環状体1eよりも側鎖の柔軟性の高い(p-オクチルオキシカルボニル)フェニル基fやp-TEGオキシフェニル基gを有する環状体1f, 1gを合成した。そして、環状体1f, 1gもπスタック自己会合多量体を形成するが、1H NMRスペクトルを比較したところ、定性的ではあるが、1e > 1f > 1gの順にπスタック会合能は低下することがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
[1]πスタック自己会合二量体を形成する3,5-ジヘキシルオキシフェニル基bを側鎖に有する環状ヘキサ-2,7-(4,5-ジアリール)アントリレンエチニレン1b、会合多量体を形成する立体障害の小さいp-オクチルオキシフェニル基eを有する環状体1e、p-(オクチルオキシカルボニル)フェニル基fを有する環状体1fについて、最終年度は、何としても単結晶化条件を見出してX線構造解析を行い、πスタック構造の詳細を解明する。また、環状体1eと1fについてはXRD測定も行い、分子集合πスタックナノチューブ構造を実証する。 [2]環状体1の6箇所のアセチレン部位のうち対角の2箇所をブタジイン結合で置換した環状体2に関して、最終年度は、側鎖bおよび側鎖eを有する環状体2bと2eを合成し、2bと2eのπスタック自己会合特性を明らかにし、自己会合しない2aとの[10]CPP包接能を比較精査する。 [3]昨年度、親水性p-TEGオキシフェニル基gを有する環状体1gを合成した。最終年度は、我々の合成法の特徴を活かし、環状体の外周部の半分(三量体部位)に疎水性側鎖eを有し、もう半分に親水性側鎖gを有するC2対称の環状体1egを合成し、両親媒性環状体1gおよび1egの極性溶媒中での会合特性を精査する。 [4]環状体1aと2aはedge-to-face型CH-パイ相互作用によってカーボンナノチューブ(CNT)の最小単位の1種である[9]CPPと[10]CPPをそれぞれサイズ特異的に包接する。環状体1aと2aは、環の配座が比較的固く、かつ、嵩高い側鎖置換基を有するためにCNT表面にπスタック吸着せず、直径サイズ特異的にCNTの軸に沿って擬ポリロタキサンの如く多数包接し、CNTを可溶化させると考えられる。この様にして、環状体1aと2aをホスト分子として、直径サイズの揃ったCNTの捕捉・可溶化・単離精製に挑戦する。
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Research Products
(4 results)