2022 Fiscal Year Annual Research Report
New Development of Synthetic Chemistry with Hydroxylamines
Project/Area Number |
22H02077
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平野 康次 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (70532696)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 有機合成化学 / 触媒化学 / ヒドロキシルアミン / アミノ化 / エーテル化 / 有機フッ素化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず当初の計画に則り、α-アミノ酸類縁体の立体網羅的合成に取り組んだ。その結果、立体選択的な銅触媒アミノホウ素化反応を見出し、非天然型α-アミノ酸であるβ-ボリル-α-アミノ酸の触媒的不斉合成に成功した。さらに、ホウ素基を足がかりとした立体特異的な変換も可能であり、これを利用することでβ位に水酸基やヘテロアリール基、ビニル基といった様々な官能基を有する非天然型α-アミノ酸の不斉合成も達成した。本手法は従来の手法では合成が難しかった、付加価値の高いanti体のジアステレオマーを選択的に合成できる点が大きな特徴である。しかし一方で、立体網羅的な合成の達成には至っておらず、特にsyn体のジアステレオマーを得るための新たな触媒設計指針が必要である。これは今後も継続すべき課題である。加えて、類似の触媒をα-アミノ酸のリンアナログであるα-アミノホスホン酸の立体選択的合成へと応用することにも成功しており、一連のアミノ酸類縁体の合成手法を大きく拡充しつつある。一方、本研究の進行中に偶然見出したトリフルオロメチルアルケンの化学については順調にデータ取得が進み、トリフルオロメチル基を含有する新たな三次元有機分子の合成を可能にする銅触媒の開発に成功した。上記の成果はいずれも国際誌に投稿、受理されており、すでに掲載済みである。 また、得られた分子の生物活性の調査も行っており、有望なリード分子の探索を進めている。 以上のように、課題全体としては概ね順調な進展が見られている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要欄にも記載した通り、非天然型α-アミノ酸の立体網羅的な合成には至っていないものの、単一の立体異性体を選択的に合成する触媒の開発には成功している。また、非天然型α-アミノ酸と並び、創薬分野で大きな期待が寄せられている三次元有機フッ素化合物の新規立体選択的合成手法を見出している。以上のように、課題全体としては概ね順調な進展が見られていると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現時点で難航している「α-アミノ酸類縁体の立体網羅的合成」に関しては今後も鋭意検討を続ける。それと並行して、当初の予定に掲げていた「求電子的アミノ化を利用するヘテロ芳香環から擬ヘテロ芳香環への骨格編集」、「ヒドロキシ ルアミンを用いた高選択的求電子的エーテル化」、「炭素―炭素単結合との触媒的シグマボンドメタセシス」の三つについて、順次検討を進める。一方、本課題の進行中に発見した「トリフルオロメチルアルケンの化学」を発展、一般化した「トリフルオロメチルカルコゲンの合成化学」にも取り組みたい。
|