2022 Fiscal Year Annual Research Report
スズ-銅のトランスメタル化を鍵とする革新的炭素-炭素結合形成反応の開発
Project/Area Number |
22H02079
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉田 拡人 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (40335708)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | トランスメタル化 / 有機スズ反応剤 / 銅触媒 / クロスカップリング / スタニル化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
スズ-銅のトランスメタル化は,有機スズ反応剤を用いるクロスカップリングにおける銅塩の加速効果の起源である.しかし,その進行を左右する因子については,未だ不明な点が多い.我々はその主要因子の一つがスズのルイス酸性であることを明らかにし,迅速かつ簡便に算出する手法として実験的には 119Sn NMR 化学シフト,理論計算では,Global Electrophilicity Index (GEI)が最も適していることを見つけた.これらの手法によれば,通常のアリールスズだけでなくヘテロアリールスズも含めて統一的にルイス酸性評価できる.この手法を用い評価できるアリールスズのルイス酸性をもとに銅触媒へのトランスメタル化活性を予見し,反応系に同時に存在する2つのスズ部位を見分けるサイト選択的な右田-小杉-Stille カップリングについて一定の予備的知見を得ることができた.また,この研究を通じてスズのルイス酸性だけでなく,配向性のヘテロアリール基および,アリール基の求核性の高さがトランスメタル化を促進する新たな因子であることを明らかにできた. さらに今年度は,トランスメタル化に関与しないスズ上置換基(ダミー置換基)がトランスメタル化を加速することも明らかにした.すなわち,従来ダミー置換基として多用されるブチル基に換えて3-メトキシプロピル基を用いると,銅触媒へのトランスメタル化が格段に加速され,Pd/Cu 協働触媒によるクロスカップリングが高効率化できることを見つけた.またこれらとは別に,アリールスズと銅のトランスメタル化を鍵過程とするアラインとの新反応開発にも取り組み,スズ部位を二つ持つ基質を用いることで,一方の炭素-スズ結合へのアライン挿入ともう一方のスズ上での環化を一気に起こすスタニル化環化反応の開発にも成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アリールスズ反応剤と銅触媒とのトランスメタル化を促進する主要因子3つを明らかにし,それを軸としたサイト選択的クロスカップリング反応やアラインを用いるスタニル化環化反応などの新しい炭素-炭素結合形成反応へと展開できている点で,順調に進展していると判断できる.さらに,主要因子の1つであるスズのルイス酸性を評価する手法を確立できている点も順調な進捗状況と判断する理由である.
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Strategy for Future Research Activity |
既に予備的知見を得ている,Pd/Cu 協働触媒を用いるサイト選択的クロスカップリングや,スズ部位を2つ持つ基質を用いたアラインの銅触媒スタニル化環化反応を詳細に検討し,完成へと導いていく方針である.また,銅触媒へのトランスメタル化を加速する新しいダミー置換基として開発した3-メトキシプロピル基を利用した,新たな触媒的炭素-炭素結合反応の開発へも研究を展開していく方策である.
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