2022 Fiscal Year Annual Research Report
Structural control and functions of anionic dinitorgen dinuclear complexes
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22H02092
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
川口 博之 東京工業大学, 理学院, 教授 (20262850)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 多座配位子 / 遷移金属 / アルカリ金属 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、二核窒素錯体の構造・反応性相関の解明と、N2を窒素源とした含窒素化合物の新しい合成法の開拓である。本年度は、アルカリ金属と遷移金属を併せ持つ錯体反応場の構築を目指し、フェノキシド基を用いた多座配位子の合成と、それを用いた多核錯体の形成を検討した。 多座配位子としては、1つのアニリド基と2つのフェノキシド基をメチレン炭素で連結した混合型配位子[ONO]を設計し、合成した。遷移金属としてはチタンを導入した。配位子のリチウム塩Li3[ONO]と塩化物TiCl4(THF)2を反応させることで(ONO)TiClを得た。この錯体にカリウムナフタレニドKC10H8を作用させると、チタンとカリウムを併せ持つ二核錯体が得られた。 [ONO]配位子がチタン金属に結合することで、配位子のベンゼン環部位がチタン金属を取り囲んだ特異な配位空間を形成している。この配位空間にカリウムが取り込まれ、接触型イオン対を形成している。 続いて、この二核錯体のTHF溶液を窒素雰囲気下に置くと、2つのチタン金属間に窒素分子がend-on型で架橋した錯体が定量的に得られた。さらに窒素分子にはカリウムがside-on型で相互作用している。この配位した窒素分子のN-N結合長は大きく伸長するとともに、RamanスペクトルのN-N伸縮振動は大きく低波数側にシフトしている。これらの結果はともに、チタン金属から窒素分子への強い逆供与の存在を示している。これを反映し、窒素錯体のTHF溶液を二酸化炭素雰囲気下で撹拌すると、直ちに反応が進行した。架橋窒素分子の各Ti-NN結合に二酸化炭素が挿入したヒドラジド錯体が定量的に得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究目的を達成するための鍵は、二核中心における 窒素分子の結合様式の制御である。本研究では、アルカリ金属を対イオンとするアニオン性二核錯体を用い、イオン対の相互作用による構造制御を行うのが本研究の特色である。今回、チタンとカリウムを併せ持つ金属錯体の合成に成功した。また、この錯体が窒素分子と反応することを見出しており、おおむね順調な進捗状況と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、チタンとカリウムを併せ持つ金属錯体の合成に成功した。本錯体を出発に、カリウムを他のアルカリ金属に置換することを計画している。これにより、イオン対効果を系統的に調査することが可能になると考えている。
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Research Products
(5 results)