2023 Fiscal Year Annual Research Report
結合の「かたさ」が反応活性化障壁に与える効果の解明
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22H02095
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森本 祐麻 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (20719025)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | sp3炭素活性化 / 高原子価鉄オキシド錯体 / 反応機構解析 / 活性種直接観測 / 水酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の研究では、鉄(IV)(オキシド)(5,10,15,20-テトラメシチルポルフィリンラジカルアニオン)の軸配位子を変えた酸化活性種(以後、Compound I)を種々調製し、これらを用いたシクロヘキサンの酸化反応を検討することで、活性点であるオキソ配位子のトランス位配位子からの電子的摂動が、シクロヘキサン酸化反応の活性化障壁に与える影響について検討した。 Compound I 前駆体である鉄(III)錯体に、硝酸アニオン、三フッ化酢酸アニオン、フッ化物アニオン、9-フッ化-t-ブトキシドなどを配位させたものを調整し、1H NMRおよび紫外可視吸収スペクトルよりそれらの生成を確認した。さらに、これらの錯体とオゾンを反応させることによって、種々の軸配位子をもつ Compound I を生成させ、紫外可視吸収、EPR、共鳴ラマンスペクトルにより同定を行った。また、電気化学的手法を用いてこれらの錯体の一電子還元電位を測定した。続いて、錯体の溶液にシクロヘキサンを加えることでその酸化反応を開始し、電子遷移スペクトルによってCompound I濃度の経時変化を直接追跡・解析することにより、反応の速度定数(k)を決定した。得られた速度定数の対数値(ln k)について、Compound I の種々の物性値との相関を解析した。 ln k は、Compound Iの鉄-酸素伸縮振動によるラマンバンドの波数と直線性を示し、π供与性の高い軸配位子を持たせた酸化活性種ほど高い反応活性があった。これはCompound I による水素引き抜きは、反応点であるオキソ配位子のトランス配位子からのπ電子供与性により促進されるということを示している。この結果は、Compound I の活性を高めることが知られるチオラートやクロライドといった配位子の効果を矛盾なく説明するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、前年度に確立した反応速度の解析手法を展開し、酸化活性種の反応性を決定する因子についての解析を行った。特に酸化活性種がもつ鉄-酸素結合のかたさが、軸配位子によって摂動を受けることを想定して検討を進めた。想定どおり、軸配位子を交換することで鉄-酸素結合の伸縮振動の波数は変化し、さらに酸化活性種の反応性との間に相関はあった。しかし考察対象のパラメーターの変化は2%程度であり幅が小さく、本研究課題で追求する結合のかたさと活性化障壁の関係を議論するのは難しいと結論した。しかし酸化活性種の反応性が軸配位子からのπ供与性によって制御されているという重要な知見が得られた。よって計画どおりではないものの順調に研究は進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、これまで得られたデータをまとめ、さらに必要なデータがあれば補完してゆく。高精度計算も進める。これらを統合し、sp3C-H結合の解離過程が基質のもつ化学構造によってどのように決定されるかについて考察する。
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