2022 Fiscal Year Annual Research Report
オキソ配位子のプロトン化による金属ジオキソ錯体の活性化とC-H活性化反応の開発
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22H02096
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
藤井 浩 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (80228957)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高原子価オキソ錯体 / ポルフィリン / プロトン化 / 酸化反応 / 反応性 |
Outline of Annual Research Achievements |
メソテトラメシチルポルフィリンを配位子としてマンガン5価ジオキソポルフィリン錯体を既報に従って合成した。マンガン5価ジオキソポルフィリン錯体と酸との反応を、低温ストップドフロー装置を用いて低温下(-40度以下)で行った。酸として、酢酸、トリフルオロ酢酸、テトラフルオロホウ酸を用いた。酢酸を混合すると、423nmに吸収ピークをもつ錯体1が生成することを見いだした。一方、トリフルオロ酢酸やテトラフルオロホウ酸を混合すると、酸の当量が小さいときには錯体1が生成すること、酸の当量が大きくなるにつれて404nmに吸収ピークをもつ錯体2に変化することを見いだした。錯体1は塩基を添加するともとのマンガン5価ジオキソポルフィリン錯体に戻るためマンガン5価状態にあること、錯体2は還元剤と反応させると、マンガン4価錯体を経由してマンガン3価錯体に変化することからマンガン5価状態にあることが確かめられた。錯体2は錯体1から酸を添加すると生成することから、錯体1は錯体2を生成する過程の中間体であることがわかった。これらの実験から、マンガン5価ジオキソポルフィリン錯体は酸と反応するとオキソ配位子がプロトン化を逐次的にうけ、ヒドロキソ、アクア配位子へと変化し、錯体1がマンガン5価ヒドロキソ錯体、錯体2がマンガン5価アクア錯体であることが示唆された。錯体1は反応性が低いが、錯体2は非常に高い反応性を有することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マンガン5価ポルフィリンジオキソ錯体とプロトンの反応から、2種類の新しい錯体を同定することができた。これは申請者が申請書で提案したアイデアの妥当性を示す結果である。これらの錯体の吸収スペクトルは、これまでに報告されているマンガンポルフィリン錯体のものとは異なっており、これまでにない興味深い錯体が生成していることを示している。また、生成した錯体は、これまでのマンガン錯体より高い反応性を有しており、本研究により大きな成果が期待出ると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
マンガン5価ジオキソポルフィリン錯体とルテニウム6価ジオキソポルフィリン錯体のプロトン化反応により、対応するマンガン5価オキソポルフィリン錯体とルテニウム6価オキソポルフィリン錯体が合成、同定を引き続き検討する。マンガン5価ジオキソポルフィリン錯体を-40度でトリフルオロ酢酸と反応させると非常に活性な錯体が生成することを見いだしたので、この錯体がマンガン5価モノオキソ錯体であるかを検証する。また、この錯体は、ジクロロメタン中では低温でも非常に不安定であったため、安定化を試みる。 ルテニウムジオキソ錯体については、マンガン錯体と同様に、ストップドフローを用いて酸との反応から新たな錯体が生成するかを検討する。さらに生成した錯体の電子状態をNMRやEPRを測定して検討する。反応性については、オレフィンやアルカンとの反応を行い、反応速度から評価する。
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