2022 Fiscal Year Annual Research Report
CRISPR/Casを用いた事前増幅不要で高感度核酸検出可能な紙基板分析デバイス
Project/Area Number |
22H02109
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
チッテリオ ダニエル 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00458952)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | CRISPR/Cas / 核酸分析 / 比色分析 / 分析デバイス / 高感度 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、紙を媒体とし、反応用酵素の固定化について試みたところ、非特異的な吸着または保持容量が低いことから、測定感度に大きく影響を与えることを予想した。そこで、よりフレキシブルにデバイスが作製できる3D印刷法を検討した。その特徴として、アクリル樹脂を基板とし、チューブに類似した溶液での反応系が実現可能であることから、保持容量による感度の低下を防ぐことが期待される。また、デバイスの形を柔軟にデザインすることができ、最もエンドユーザーに適する安価及び持ち運び可能なデバイスを設計することが実現できる。 まず、プローブの設計を金ナノ粒子(AuNPs)―一本鎖DNAを(ssDNA)―アルカリフォスファターゼ(ALP)の複合体とした。溶液系において作製した複合体に基質の5-Bromo-4-chloro-3-indolylphosphate/Nitroblue Tetrazolium(BCIP/NBT)を加え、比色法を用いて合成したプローブのALP酵素活性を確認した。また、CRISPR/Cas複合体を用いてssDNAの切断実験を行い、バックグランドシグナルを抑えながら、ターゲットDNA濃度に応じたシグナル強度が確認できた。検出限界が1pMと低く、優れた結果が得られた。 溶液系においてコンセプトを達成した後、3Dデバイスをデザインし、ポリマーを介してAuNPs-ssDNA-ALP複合体を3Dデバイスに固定化することを試みた。まず、ポリマーの合成に成功し、デバイスへのコーティング及び金ナノ粒子の固定化をX線分光装置(XPS)を用いて確認できた。また、ssDNA及びALP を標識し、基質を添加することによって、比色シグナルが観察された。最後に、CRISPR/Cas複合体を用いてssDNAの切断を検証し、ターゲットDNAの存在下で、ALPが溶液にリリースし、顕著な比色シグナルが観察された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
溶液においてセンシングプローブの作製が成功し、高感度かつ迅速にターゲットDNA を測定することを実現した。また、アクリル樹脂を基板とし、アルカリフォスファターゼを固定化することが成功し、溶液系と同等な感度でDNAを測定することを実現した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度の前半では、まず3デバイスを用いて、ターゲットDNAに対する濃度応答を確認する実験を行う。また、各実験条件を最適化し、高感度なセンシングを目指す。具体的に、3Dデバイスに固定化する各試薬の量及び標識時間は感度に直接影響するため、検討を行う。また、酵素反応は時間と濃度に依存し、時間が経つことにつれて色変化し、シグナルが強まる。長時間のセンシングが高感度な結果を獲得できる一方、エンドユーザーに対する待ち時間が長くなる問題点及び両者のバランスについて検討する。最適化を行った後、作製したプローブをデバイスに統合し、水溶性ポリマーのステータスを調整することによって、自動で反応時間が調整できるデバイスの作製を試みる。 2023年度の後半からは、リアルサンプル(ウィルスのDNAまたはRNA)を使用して分析を試みる。また、学会及び交流会などで情報収集を行い、実社会の需要に応じたユーザーフレンドリーなデバイスについての検討を行う。 また、国内及び海外の学会に参加し、これまでの研究成果を発表する。
|