2022 Fiscal Year Annual Research Report
グリーン物質合成を志向した超原子価化合物を利用する電極メディエータ系の開発
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22H02118
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
信田 尚毅 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 助教 (20839972)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 電解合成 / 超原子価化合物 / 電極メディエータ / グリーンケミストリー / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、グリーン物質合成を志向した超原子価化合物を利用する電極メディエータ系の開発に挑戦する。超原子価ヨウ素に代表される超原子価化合物は、有機合成化学における重要な反応剤であるが、その合成・発生には化学量論量の酸化剤が必要とされ、持続可能な物質合成という観点からは課題がある。一方、電気化学反応(電解反応)を利用する超原子価化合物の合成は、電気エネルギーによる末端酸化反応が可能である点で魅力的である。本申請研究は、超原子価化合物の電解発生とメディエータとしての利用を鍵とする物質合成に挑戦することで、安全性・経済性・環境調和性の電解反応システムを提案する。 本年度は、まずπ拡張構造を有する超原子価ヨウ素メディエータの開発を目指し、様々なπ共役構造を有するヨードアレーンの電気化学測定を行い、その安定性を評価した。その結果、アントラセン骨格が極めて高いレドックス安定性と比較的低い酸化電位を示すことを見出し、ヨードドアントラセンを主骨格とするメディエータを設計した。特に、安定化のために置換基を導入した9-ヨード-10-メシチルアントラセンは様々な電解液組成で高いレドックス安定性を示すことを明らかとした。このメディエータを用いて電解合成を行ったところ、分子内C-Nカップリングに基づくカルバゾール構造の構築に効果的であることを見出した。さらに、電気化学的手法に基づく速度論的解析により、反応速度を定量化することにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の通り、さまざまなπ共役系を有するヨードアレーンの電気化学測定を通じ、ヨードアントラセン骨格を最も有望な母骨格として決定することができた。さらにアントラセン骨格への適切な置換機導入により、多彩な電解液中でも安定なレドックス特性を示す革新的メディエータ設計の礎を築くことに成功した。このメディエータを用いた合成化学的な検討と速度論的解析に関する初期的な知見もすでに得られており、本研究は概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に合成したメディエータを、さまざまなC-Nカップリング反応へと展開する。また、類似の構造を有する多彩なメディエータ群を合成し、電気化学特性、触媒性能、速度論解析をそれぞれ進める。これらのデータを集積することで、メディエータの性能に関する構造活性相関を見出すことを目指す。
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