2022 Fiscal Year Annual Research Report
気液界面プラズマによる高効率炭素固定プロセスの開発と応用
Project/Area Number |
22H02120
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 敏浩 京都大学, 国際高等教育院, 教授 (90293886)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 気液界面プラズマ / 大気圧プラズマ / 誘電体バリア放電 / プラズマ化学 / 炭素固定 / 窒素固定 |
Outline of Annual Research Achievements |
二酸化炭素の削減・固定化に向けて、さまざまな技術開発の必要性が高まっている。本研究の目的は、高エネルギー効率で二酸化炭素を物質変換できる革新的プラズマ反応場を開発することである。我々は、独自に開発した水中密閉型誘電体バリア放電を活用することによって、二酸化炭素から消毒・殺菌に有用な物質への変換が可能であることを見出しており、この知見を出発点にして研究を進めた。水中密閉型誘電体バリア放電方式では、大気圧プラズマでは避けがたい空気由来の硝酸の生成を抑制し、過酸化水素の生成が支配的となる反応場を実現することが可能であり、そのように最適化した反応場において、二酸化炭素の有機過酸化物への物質変換に適した反応条件の検討を進めた。また、水中密閉型誘電体バリア放電方式の改良に加えて、気相反応と液相反応を分離して反応解析を行うためのメッシュ型電極放電方式、さらには、液相反応を高効率に進行させるためのワイヤー・イン・ノズル水中放電方式など新たな電極構造の開発と改良も進めた。それぞれの様式の放電について、気液界面プラズマ反応の生成物に対する振動分光分析による検出・同定を進め、二酸化炭素と水との反応により新たに生成した有機化合物の構造解析に取り組んだ。二酸化炭素と水から成る反応場に加えて、空気(窒素)と水から成る反応場についても実験を進め、アンモニアの合成に適したプロセス条件の探索も進めた。さらに、本研究において気液界面プラズマ反応装置のために開発した大気圧プラズマ源は、高機能薄膜の表面改質への応用にも好適であることから、大気圧プラズマ処理を施すのに適した薄膜試料の作製と構造・物性評価も合わせて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、気液界面プラズマ反応のための大気圧プラズマ源の開発を中心に据えて研究を進めた。水中密閉型誘電体バリア放電方式の改良に加えて、気相反応と液相反応を分離して反応解析を行うためのメッシュ型電極放電方式、さらには、液相反応を高効率に進行させるためのワイヤー・イン・ノズル水中放電方式など新たな電極構造の開発と改良を進めた。これらの電極構造の新規開発により、次年度以降に気液界面プラズマを用いた新規反応プロセスの開発を本格化させるための基礎的作業を完了させることができた。また、紫外吸収分光分析や比色分析に加えて振動分光分析により気液界面プラズマ反応の生成物を多角的に検出・同定するためのフーリエ変換赤外分光光度計を導入し、二酸化炭素と水との反応により新たに生成した有機化合物の構造解析に取り組んだ。低密度の反応生成物の検出・同定のために導入した長光路多重反射セルを用いた赤外吸収分光測定による気相反応診断に取り組む準備も進めることができた。以上の理由により、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
気液界面プラズマのその場分光診断による基礎的実験データの蓄積をさらに進め、液相に捕集した反応生成物を検出・同定した結果との相関関係を明らかにする。液相に捕集した反応生成物の分析については、昨年度に新たに導入したフーリエ変換赤外分光光度計を用いた振動分光法による解析を駆使し、生成した有機化合物の同定・構造解析をより詳細に行う。また、低密度の反応生成物の検出・同定のために導入した長光路多重反射セルを用いた赤外吸収分光測定による気相反応診断にも取り組む。これらのデータをもとに、気液界面プラズマ反応のメカニズムの解析をより詳細に行い、二酸化炭素から有用な有機化合物を生成するための気液界面プラズマ生成条件(電極構造、放電駆動電圧、周波数、および、デューティ比など)の最適化をさらに推進する。 さらに、気液界面を構成する気体と液体を系統的に変えて反応を設計し、二酸化炭素以外の気体を原料に用いた新たな気液界面プラズマによる物質変換反応を開拓する作業を本格化させる。特に、原料ガスに空気を用いると、空気と水のみから窒素酸化物が生成され、プラズマ生成条件を制御することにより、硝酸と亜硝酸などの生成量の比が系統的に変化することを既に確認している。これらの準備実験を足がかりにして、気液界面プラズマ反応による生成物水溶液について農業分野への応用を検討する。気液界面プラズマ反応による生成物水溶液は、植物の成長を阻害する菌や微生物を過酸化物により不活性化することに加えて、窒素酸化物により植物の成長を促進できる機能を合わせ持つことが期待される。そこで、放電条件を最適化し、亜硝酸イオンや硝酸イオンやアンモニウムイオンなどの各種窒素化合物イオンの選択合成を実現することにより、プラズマを用いた新規窒素固定法を開発する。
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Research Products
(4 results)