2022 Fiscal Year Annual Research Report
液晶エラストマーの多軸変形挙動の探究とシワを形成しない機能膜への展開
Project/Area Number |
22H02143
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浦山 健治 京都大学, 工学研究科, 教授 (20263147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小椎尾 謙 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (20346935)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 液晶 / 液晶エラストマー / エラストマー / ゴム |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は,これまでの研究結果により,液晶エラストマー膜はいかなる異方的な二軸伸長を与えても直交二方向の真応力が均等化されるという特異性を見出している。この特異な力学物性は,液晶エラストマー膜が固体でありながら,二軸伸長下では液体のように振る舞うことを意味しており,その物性の応用例として,「シワのよらない膜」が考えられた。本年度は,シワ形成を測定できるレーザ測定系を確立し,それを用いて,カプトン膜およびLCE膜の測定を行った。比較試料として,厚さ100ミクロンのカプトン膜を用い,測定に供した。膜の両端を固定し,ずり変形を与えたカプトン膜には肉眼で視認可能なシワが形成された。自作したレーザ測定系により,シワ形成による膜の隆起を測定したところ,100マイクロン弱の隆起を確認できた。液晶エラストマー膜に同様の条件でずり変形を与え,膜の隆起をレーザ測定系で観察したところ,有意な隆起は確認されなかった。このことは観察した範囲内では,液晶エラストマー膜はシワを形成しない(しにくい)といえる。しかし,本測定に用いた液晶エラストマー膜は厚さが500マイクロメートルほどであり,カプトン膜に比べると5倍ぐらい厚い。一般的に,膜厚が厚い方が,ずり変形に対して隆起しにくい(シワが形成されにくい)ため,本観察結果より,液晶エラストマー膜ではシワが形成されにくい,とは言い切ることはできない。現在,液晶エラストマー膜の薄膜化を検討しているが,薄膜化した際の膜厚の均一性に問題があることがわかった。成膜時のキャスト条件を最適化し,厚さ100マイクロン程度の液晶エラストマー薄膜の作製に取り組んでいく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シワ形成の参照試料であるカプトン膜の膜厚は100マイクロメートルであり,この薄膜でのシワ形成による隆起は自作のレーザ測定系で計測できている。液晶エラストマー膜も同様に膜厚を100マイクロメートル以下まで薄膜化する必要がある。しかし,現在,膜厚が均一な薄膜化となると,薄膜化は500マイクロメートル程度にとどまっている。同じ材料でも,膜厚が大きくなればシワ形成は起こりにくくなるので,参照試料と膜厚をそろえて,液晶エラストマー膜の膜厚も100マイクロメートル程度まで薄膜化する必要がある。しかし,現状では,膜厚が均一な100マイクロメートル厚の液晶エラストマー膜の成膜には成功していない。このため,やや遅れている,という評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
液晶エラストマー膜は,キャスト法によって成膜している。キャスト法の最適化により,膜厚100マイクロメートルの均一膜厚をもつ膜の成膜を検討する。具体的には,成膜温度(キャスト温度),反応モノマー溶液のモノマー濃度,およびキャスト台に展開する反応溶液の量などを増減させ,目的の薄膜を得るためのキャスト条件を最適化する。
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