2022 Fiscal Year Annual Research Report
Study of Serious Problems of Conventional Methods in the Evaluation of Ultimate Mechanical Property of Polymer Crystals as a Guiding Principle for the Development of Ultra-Strong Polymers
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22H02151
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | 公益財団法人科学技術交流財団(あいちシンクロトロン光センター、知の拠点重点研究プロジェクト統括部) |
Principal Investigator |
田代 孝二 公益財団法人科学技術交流財団(あいちシンクロトロン光センター、知の拠点重点研究プロジェクト統括部), あいちシンクロトロン光センター, 上席研究員 (60171691)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 義裕 福井大学, 繊維・マテリアル研究センター, 教授 (00275166)
関口 博史 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 主幹研究員 (00401563)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 結晶ヤング率 / 応力緩和 / X線回折 / 高次組織 / 小角X線散乱 / ガラス転移温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子結晶の極限力学物性評価を行う実験法として、変形下にある試料のX線回折ピークシフトから結晶歪を評価し、試料に働いている応力と結晶歪との関係から分子鎖軸方向の結晶ヤング率を求める方法がある。ところが試料の処理条件によって、こうして求めた結晶ヤング率が異常に変化することが数多くの高分子について判ってきた。本研究では、その原因を分子、結晶、高次組織の幅広い階層構造の観点から詳細に解明し、「真の結晶ヤング率」を正しく評価することを最終目的とした。今年度は、予備的実験として、ナイロンテグスを試料とし、逐次伸長歪印加過程におけるX線回折パターンの変化を放射光X線を用いて秒オーダーで測定していった。僅か秒間隔のデータ収集であったが、試料にかかる応力は急速に緩和していき、同時に結晶歪そのものが時間とともに変化していくことが判った。理想的には、応力緩和の生じる前に結晶歪を測りきってしまう必要があるが、強い放射光X線はたとえ秒オーダーと言えども、試料の温度を上昇させ、結晶域にダメージを与えてしまう。この問題に対処するためには、試料をガラス転移温度域まで冷却すること、回折ピークシフトの定量解析に支障がない範囲で、照射X線の輝度を抑えること、露光時間を短くすること、など様々の点での工夫が必要である。2回目の放射光実験で、これらの点に重点をおいて調べた結果、低温での実験は必ずしも応力緩和を完全には抑えきれないこと、むしろ、X線輝度を低くする方が、温度上昇に伴う力学緩和を抑える上で有効であることなどが判ってきた。このような現象は用いる高分子の種類によっても敏感に変わってくるはずである。勿論、露光時間の長短も大きく影響するはずで、力学緩和速度および回折ピークのS/N比との兼ね合いで最適の測定条件を見出すことが必要となる。次年度には、これら様々のポイントに留意し最適の実験条件の抽出を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由 一定歪みに変形させた試料が応力緩和を引き起こすことは実験開始時から予想はしていたが、当初の予想をはるかに超えた速度で生じることが判った。また、放射光X線による試料ダメージも予想以上に大きいことも判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の如く、力学緩和を出来る限り抑えて正確な結晶歪を評価する上に必要な温度、X線露光時間、X線輝度の大小など様々の因子を明確にすることを目指す。その条件が見出された段階で、種々の高分子についての本格的実験を進めることとする。
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