2022 Fiscal Year Annual Research Report
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22H02153
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
玉置 信之 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (00344218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津田 真寿美 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (30431307)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 光薬理学 / フェニルアゾチアゾール |
Outline of Annual Research Achievements |
ATP経路を光制御するときに、ATPと同様の高エネルギー化合物もしくはその阻害剤に光応答性を導入することが考えられる。これまでにアゾベンゼンが光スイッチ部位としてもっぱら利用されてきたが、アゾベンゼンを光スイッチするためには生物に対して基本的に有害とされている紫外線を用いなければならないという問題点があった。その問題点を解決するためにはアゾベンゼンに代わる新しい光スイッチの開発が望まれていた。今回、種々の生体機能を可視光でスイッチできる光スイッチとしてフェニルアゾチアゾール誘導体の様々な特性を調べた。まず無置換のフェニルアゾチアゾールはトランス体からシス体への光異性化反応が405nmの可視光で進行し、また、シス体からトランス体への光反応も520nm程度の緑色光で進行することを明らかにした。すなわち、フェニルアゾチアゾール誘導体は基本的に可視光で働く光スイッチであり、フェニル基への置換基の導入により、トランス体からシス体への光異性化に要する波長を525nmまで朝は超過できることがわかった。さらに、フェニルアゾチアゾール誘導体は、トランス異性体とシス異性体の優れた光定常分布、最大7.2時間の熱半減期、優れた還元剤安定性を示した。X線結晶構造解析により、興味深いことにフェニルアゾチアゾールのシス異性体はT字型直交幾何学を示すことが明らかになった。詳細なアブイニシオ計算により、実験観測と一致する電子遷移と異性化エネルギーバリアが示された。この研究で明らかにされた基本的な設計原理は、光薬理学応用のための様々な可視光フォトスイッチの開発に役立つと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の目的であるATP経路を可視光で光制御することを可能にするフェニルアゾチアゾールを開発し、特性の詳細を調べた。
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Strategy for Future Research Activity |
フェニルアゾチアゾール研究によって、アゾベンゼン中の1つのフェニル環をヘテロ環で置き換えるだけで応答波長など様々な特性をチューニングできることがわかった。今後は、別のヘテロ環を用いたときの効果を調べたい。また、フェニルアゾチアゾールやその他のヘテロ環アゾベンゼンをATP関連の生理活性物質に導入したときの光スイッチ効果を調べる予定である。
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