2022 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of Itinerant Molecule Materials for Organic Spin Photonics
Project/Area Number |
22H02158
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内田 幸明 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (60559558)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 液晶 / 有機ラジカル / ラジカル-三重項対機構 / 光磁気効果 / スピン注入 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、遍歴分子仮説に基づいて、液晶性の有機ラジカル化合物の設計を行い、室温付近での磁気秩序化を実現することを目的としている。本年度は、①有機ラジカル部位と三重項励起色素部位を分子内に共存させた化合物のラジカル-三重項対機構による光磁気効果を利用する戦略と、②分子内に二つのラジカル部位を持つ化合物の分子内磁気相互作用の光による誘起を利用する戦略について、検討を行った。 ①有機ラジカル部位として、化学的安定性に優れ、液晶性を阻害しない実績を有するジフェニルPROXYLを用い、三重項励起色素部位として、スピン偏極率が高い1,2-ジケトンの中でも、液晶性化合物と親和性の高い形状を持つベンジルを用いた、化合物の設計を行い、その一つが液晶性を示すことを確認した(論文執筆中)。次年度以降では別の液晶性有機ラジカルとの混合等により、光誘起磁気秩序化が起こる条件を探る。 ②アゾベンゼンで架橋された2つのキラルPROXYL基を持つ化合物を合成した。液晶性を示さないことが判明したが、アゾベンゼン部分のトランス-シス光異性化によって磁気特性が変化することを見出した。光異性化によりラジカル同士が接近し、交換相互作用が増加した。種々の検討を行い、Through-space分子内磁気相互作用を光学的に制御したと言えることがわかった(雑誌論文として出版済み)。光磁気効果の一種として、本研究で目指す磁気秩序化した液晶とともに用いることで、光スイッチ機能を付与できると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた設計・合成がスムーズに進んだ上、別途合成していた物質の光磁気効果の検出に関する研究成果の公開を行ったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の化合物探索により、ジフェニルPROXYLとベンジルを含む液晶性化合物の合成を達成したが、本化合物を分子内スピン注入の実験に用いるには、十分な量が得られておらず、今後は追加合成から始める。その際、委託合成と反応最適化の両面から検討を行う。 次に、合成した分子内スピン注入を起こす液晶を反磁性液晶に溶解してガラスセルに注入し、ERP 分光法を用いて、液晶中で起こる分子内スピン注入を検出する。その際、磁化率の上昇率や上昇した磁化率の緩和時間の濃度依存性を解析することで、NR部位に移ったスピン偏極の緩和時間と、分子の遍歴性によるスピン偏極の緩和時間を見積もる。
|